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よしなしごとども 書きつくるなり
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中村邦生・編(風涛社)

全集には内容見本が付きものだが、作家が書いたその推薦文はすばらしいものが数多くある。
(おそらく)ペラッペラな販促物であるパンフに、こんな大御所たちが推薦文を書いていたなんて、という驚きも味わえる1冊。

よしもとばなな、平野啓一郎、丸谷才一、作家じゃないけど淀川長治など、読ませる推薦者ばかり。
そこまで言うなら読んじゃうよ、と思ってメモしたのが瀧井孝作氏の「無限抱擁」。
聞いたこともない作家さんだが期待大。

ところでこういう本を作ることを思いついた中村邦生氏には敬服するが、各推薦文のあとに書かれたひとことは、正直「?」であった。
何を言わんとしているのか伝わらないものが多かったし、名文のあとでは蛇足に思えて仕方がなかった。

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長岡弘樹(小学館)

警察学校で繰り広げられる過酷な訓練。
いじめ、裏切り、脅迫……ふるいから落ちるのは誰か。手に汗握る連作短編集。

これは面白かった。帯に「既視感ゼロ」の文字が躍っているが、大袈裟ではなかった。
ひとつひとつのエピソードごとに主人公(視点)が入れ替わり、気になる事件の後日談がきっちり描かれていて親切きわまりない。特に感じたのは第三話「蟻穴」。ヘッドフォンの中は……結末やいかに。
エピローグでは風変わりな教官・風間の視点もあって、最後までニクい演出であった。

しかしこれはフィクションであろうが、げに恐ろしきは警察学校である。
こんな軍隊みたいなことが行われていて、警察官が全員こんな所を卒業しているとしたら、バカボンに出てくる目ん玉つながりのお巡りさんでさえ尊敬してしまいそう。
100点

中村文則(集英社)

 失踪した立花涼子を探して、楢崎はある宗教団体にたどり着く。それは松尾正太郎という老人を中心とした、自由な集合体であった。
 立花はそこにはおらず、怪しげな宗教団体・教団Xにいると聞き、楢崎は潜入する。教団Xは性の解放を謳い、信者たちは性に溺れていた。
 やがて教団Xの幹部である高原はテロを計画するが……。

登場人物の設定がなかなか把握できず、私ボケちゃったか? とドキドキしちゃったさ。
でも「教団X」で検索しようとしたら「相関図」と候補が出たから、みんな苦戦してる?
で。
すごく面白い部分とそうでない部分の差がありすぎて、何と申し上げてよいやら。

松尾の語りの部分は面白かった。特に戦地で生きるか死ぬかの瀬戸際での想い。軍人は日本万歳でもって思想が硬化していた、別な考えを自分の中で深く咀嚼するのを恐れていた、なんて話。
宗教もそういうところ、ありますね。思想に飲み込まれて頭が硬化してしまう。理性的に語りかけても無駄、かっちかちやぞ。

対する教団Xの教祖である沢渡の話も、興味深かったです。
医師であった彼は昔、外国の貧しい村で、ある少女を救った。そのあとで、脅迫しながら彼女を凌辱した。自分が彼女の運命を握っているという全能感、苦しむ少女を見て欲情する心。相手の苦しみが快楽に繋がることに気付く沢渡。
彼の理路整然とした語りは、その狂気をも強引に納得させるだけの力がありました。

エロの部分は、否定はしないけどしつこかったですかね。この作品をセンセーショナルなものにするために、作者はここまで書いたのかな? なんて邪推してしまいました。
70点

中島たい子(筑摩書房)

 ぜんそく持ちの実花。小、中、高と病気とともに成長する彼女。ぜんそくのせいで諦めざるを得ないことも多かったけど、それでも、がっかりしながらも実花は生きてゆく……。

 これは共感できた。体調のせいで楽しい行事に参加できない自分、はいはい、こうなることはわかっていましたよ、という気持ちをまざまざと思い出した。
 あきらめ5割、あとは悲しみとくやしさと。それから自分がいなくても着々と進んでいく授業、学校というものに対する恐怖とか。

 あとは、自由人で美術的センスがあるのだが、ちょっと問題児の光樹くんの描き方もよかった。悪い子じゃないのになぁ、それじゃあクラスに馴染めないよねぇという男子、いるいる。
 残念だったのは教師の描き方。新鮮味ゼロ。重松清の読みすぎでは?
 それと誤字。3箇所は確実にあったな、まさにがっかり。
70点

中村文則(河出書房新社)

 腕利きのスリ師、西村。彼は木崎という男に仕事を頼まれる。最初は強盗を、次は3つの小さな盗みを。
 断るという選択肢はない。失敗しても殺される。西村はやりおおせるのか?
85点

母親に命令されて万引きをする、小さな男の子の話が一番印象に残ったかな。まるで小説みたいな話(!)だけど、本当に、今この瞬間に同じような境遇で苦しんでいる子はいそう。
男を連れ込む母親、暴力をふるう男、絶望している子ども。どうしてこう3点セットなのかね。

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