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よしなしごとども 書きつくるなり
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有吉佐和子(新潮社)

 鬼怒川沿いの結城で育ったチヨ。紬を織る腕をかわれて、日露戦争で生還を果たした強運の男性と結婚することになる。舅も姑も優しい人たちで、チヨは極貧の実家よりも婚家のほうが居心地が良いほどであった。しかし肝心の夫は怠け者で、やがて彼は埋蔵金伝説にうつつをぬかすようになる……。

 幼いチヨが妻、母、姑になるまでを描いた一代記である。と言っても文章は簡潔にしてリズミカル、なので冗長ではない。この感じ、松本清張に似ているかも。
 リズムを作る一翼を担っているのが方言だ。私にとっては耳になじんだ茨城弁が、チヨの心情をいきいきと描く。

 ただ、ラストが良くない。懸命に生きたチヨの生涯がこんな終わり方をするとは……あまりといえばあまりではないか。
80点

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泡坂妻夫(新潮社)

 新興宗教である惟霊講会は、信徒180万人を抱える巨大な団体。教祖である桂葉華聖は、自分の後継者を誰にするかで悩んでいた。
 2人の候補者の思惑が錯綜するなか、ひょんなことからヨギ ガンジー(あやしげな探偵)と弟子たちが、その跡目騒動に巻き込まれてゆく……。

 昔、筆者の「生者と死者」という作品を読んで、そのときも度肝をぬかれたが、この作品も甲乙つけがたいすごい仕掛けが施されている。こんな本は、世界にこれ一冊かもしれない。そう思うと(変な言い方になるが)筆者の懸命な遊び心には感服するばかりだ。
 非常に楽しませてもらった、が身近に筆者のような人がいたら、その粘り強さは何かと面倒くさそうではある。
75点

有栖川有栖(東京創元社)

 信州の神倉という街は、新興宗教「人類協会」の聖地であった。英都大学の推理小説研究会部長である江神は、その街へ行ったらしい。なかなか戻らない彼を心配して、研究会の仲間四人が神倉へ乗り込むが、そこで思わぬ殺人事件に遭遇し……。

 本を手にした瞬間その厚さと重さに驚き、果たしてこんな長編を飽きずに読み通せるのかと思ったが、まったくの杞憂であった。
 何やら秘密を抱えているらしい宗教団体。「城」に幽閉されてしまった研究会のメンバーの目前で、次々に巻き起こる事件。テンポ良く進むストーリーに釘付けとなった。
 犯人は、キャラクター的に少し弱い気もしたが、動機は意外性があって良かった。読了後、彼が自らの生い立ちを語るシーンを探しに探してしまった。

 この作品に掲載されている「城」の図面は、私淑する建築家の安井俊夫氏によるものです。「城」を具体的にイメージできて助かりました。
85点
有栖川有栖・安井俊夫(メディアファクトリー)

 ミステリ作家の有栖川有栖氏と、一級建築士の安井俊夫氏が、密室について熱く語り合った一冊。

 密室は何ぞや? どのようにそれは分類できるのか? 建築的な見地からひもとく密室とは? 等々、密室についての疑問を次々に解き明かしてゆく会話は痛快無比。まさに痒いところに手が届きまくった作品といえよう。
 時にお二人の会話は脱線してゆくのだが、それがまた面白い。余談や薀蓄が、本文と同じくらい興味深かった。
 巻末にはお二人オススメの密室モノが三冊ずつ挙げられている。食指を動かされる作品ぞろいで、どれも読んだことが無い私はわくわくしてしまった。
採点なし
有川浩(角川書店)

 塩の結晶が隕石のごとく地球に落下して、その瞬間から人間が塩化してしまう現象が始まる。崩壊してゆく社会。その中で、元自衛官の秋庭と高校生の真奈は出会う……。
 秋庭と真奈の二人の前に、いろいろな人間が現れるのだが、そのバリエーションが豊富。最愛の女性を失った男、刑務所から脱獄し自暴自棄になった男、ルポライターを夢みる、鼻持ちならない中学生、そして自衛隊の司令官である入江という男。それぞれが語る言葉を持ち、きちんとキャラが立っている。ストーリーもテンポ良く進み、そつがない。
 しかし手放しで「面白かった」と、なぜか言えない。秋庭と真奈の有りようが、あまりに良くあるパターンだから、か。ひねりがなくて展開が読めてしまうのだ。
 この手の恋愛話は、テレビや映画で散々見た気がする。いたいけな若い娘と無骨だが優しい男……設定からして古い。
70点
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