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よしなしごとども 書きつくるなり
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NHK「東海村臨界事故」取材班(新潮社)

 99年9月。茨城県東海村で臨界事故が起きる。
 作業中だった男性二人が致死量の放射線を浴び、病院に収容される。そのうちの一人、大内氏の83日間の闘病を記したドキュメント。

 この事故で死者が出たということは知っていたが、こんなに壮絶な闘病があったことは知らなかった。
 入院当初は普通に会話も出来ていたが、あっという間に病状は悪化し、まさに大内氏の身体は朽ちていった。
 染色体はバラバラに破壊され、そのため皮膚は再生力を失ってただれ、大量の体液が浸み出していたという。
 そんな生き地獄のような日々を耐えたご本人とご家族の心情は察するに余りあるが、あれもだめ、これもだめ、と打つ手を失っていく医師や看護婦の苦悩もまた読むのが苦しい程だった。

 二度とこのようなことが起きないよう祈る……と言いたいところだが、本当は一度だって起きてはならないことだったのだ。それほど彼の死は残酷で重い死であった。
90点
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江戸川乱歩(新潮社)

 温故知新。そんな四字熟語が脳裡をよぎる今日この頃。いやはや予想以上に面白かった。
 「人間椅子」が特に気に入った。丁寧に、存分に不気味なムードを盛り上げるテクニック。そして最後のオチ。「それはすべて夢だった」ってのは推理小説界のタブーだが、このラストは「あり」でしょう。
80点
江國香織(新潮社)

 アル中の妻、笑子。ホモの夫、睦月。彼のホモダチ、紺。
 情緒不安定な笑子に、病的な掃除好きにして、サド的正直さを持つ睦月。この二人、どう転んでも上手くいくはずがないだろう。それに紺の直情的な性格もなんだか白々しい。
 「あとがき」に、タイトルは他人の詩の中から、章の見出しは絵画のタイトルから借用、と書かれていた。ここに如実に作家の軽さ(悪い意味での)が出ていると思った。何が書きたいかではなく、字ヅラだけで単語を選んでいるのではないだろうか。
40点
海月ルイ(文藝春秋社)

 三人の女性が「子供」をめぐって織り成すサスペンス。
 旧家に嫁いだ美津子。なかなか子供ができない彼女は次第に追い詰められてゆき、ついには妊娠を偽装する。
 看護婦の潤子。夫の女癖の悪さに辟易して、幼い娘を連れて家出するが、子供を取り上げられ会うことさえ出来なくなる。
 ホステスのひとみ。怠惰な生活の果てに望まない妊娠をする。始末に困って潤子に堕胎を依頼するが、潤子は普通分娩をさせ、生まれた子供を美津子に託す……。

 無関係だった三人の運命が次第に絡まりあっていく展開が鮮やかである。
 ただ、人物描写は型通りである。特にひとみに関する、万引き、売春、過食などという部分は、お定まりの表現で読み流してしまった。
75点
内田百間(新潮社)

 人を喰ったような百鬼園先生が、あちこちで巻き起こす珍騒動。特に面白かったのが、やはり借金話。
 借金取りがやってくるので、給料日が嫌だという。原稿料が入っても借金取りがやってくるので、文をひさぐことを止めたいという。
 そんなぐだぐだな話なのだが、どう考えてもヘンな話を、まじめくさって語る先生がおかしくてしょうがない。
 また、高利貸しを訪ねて行ったときに家を間違えてしまい、そこの家人に笑われて「私はかますの干物のように痩せ衰えて、その家を出た」とあって、ひひひひと笑ってしまった。

 それから他人のいびきは「ほら穴に泥水が吸い込まれるような、ぐわばッと云う音を発して破裂するのである」。
 随所にある、こういうとぼけた表現が本当に楽しかった。
 ※著者名の「間」の字は、本当は門構えに日ではなく月です。
80点
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