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よしなしごとども 書きつくるなり
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芹沢央(KADOKAWA)

紗英は不妊に悩んでいたが、夫は非協力的でしかも浮気している気配があった。彼女は幼い頃から仲がよかった奈津子に頼り切っていた。
奈津子は夫を嫌悪し、しかもサークルなどでも浮いた存在で居場所がなく、明るい紗英を慕っていた。
支えあう二人であったが、やがて紗英の夫が殺されて遺体が山中から発見される……。

この結末は予想外、筆者にまんまと騙された。こういうトリックはきっと昔からあったのだろうが、あまりに描き方が見事だった。
それはさておき。
女性特有の「あるある、だけど見るのも聞くのも嫌」なことがらを、どぉんと目の前に出されてたじろぐシーンがいくつかあった。
紗英の勤める助産院で暴言を吐く女性、「産んでもいないのに何がわかるの?」。
奈津子のボランティアサークルについて彼女自身が仲間たちを「いい歳して女子高生のようにつるんではしゃいでいる」と見下したり。

それから驚くような表現もあった。
誰とでも仲良くなれる起用さを持つ紗英は、学生のころグループで固まるクラスメートたちを不思議に思っていた。と同時にグループ間をまたげる度量が自分にあることに優越感を抱いていた。
優越感? それこそ不思議な感覚、ちっとも羨ましくはない。

というように、ところどころ引っ掛かる表現があって、初見の作家であったが次にはなかなかいかないかもしれない。
80点

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浅井リョウ(新潮社)

 就活でつながった5人の男女。ツイッターでの発言を交えながら、それぞれの思いが交錯する。主人公・拓人は、他の4人の虚実とりまぜのツイートを、シニカルな態度で眺めていた。
 やがて内定をもらう者が出始め、5人の関係は微妙に変化していく……。
70点

読んでて本当に苦しかった。主人公がクズなんだもの。友だちが内定を取れば「(会社名) 2ちゃん 評判」なんて検索するようなヤツで。
他の4人のなかの一人、隆良もかっこばっかりつけて、オレはシューカツなんてものに流されない、とか言っちゃうし。
理香は名刺を作って精力的に企業のOB訪問、その必死さに周囲は引いてたり。

といやぁな要素をいろいろ書きましたけど、実は自分の中にもそういう暗部ってあるんですよね。
親戚の子が県外の知らない高校へ入ったと聞けば「(高校名) 偏差値」でググるよね、うん。
そういう自分の醜い行動を、白日の下に晒される感じがして、読んでて苦しかったのでしょう。

それとツイッターという存在。
私は(たぶん)ライトユーザーですが、それでも踊らされてる気持ちになることがあります。
だものそこに自分の存在意義を感じている若い人なんて、ツイートするための行動が生まれてしまうんじゃなかろーか。
リア充じゃないと! せめて週イチで外食した画像をUPしないと! とか。
そんな極端なヤツはいないか……でもうまく使わないと、この作品のように人間関係がぶっ壊れますね。
おー怖っ。


芦原すなお(東京創元社)

 不思議な能力を持つ小説家の妻。彼女は未解決の事件を、あらましを聞いただけで解決してしまう。
 うーん、これは感想を書きづらい。嫌いではないが、設定に無理があるように思える。時代背景は「現代」だが、主人公の夫婦だけが、明治時代の文豪夫婦していて、それがどうにも……。妻が暴くトリックも、古めかしい。
 それでもこの作品が醸し出す雰囲気、素直な優しい雰囲気は気に入った。
 妻は料理上手という設定で、これが本当に食指を動かされる。カマスを焼いて、すり潰して、ムギ味噌と合わせて、直火であぶる……日本酒を冷やでつけてくれぃ。
70点
浅田次郎(集英社)

 短編集。私は表題作より「うらぼんえ」が好き。
 嫁という立場で、四面楚歌で、艱難辛苦してるとき、じいちゃんが助太刀に来てくれる……あの世から。
 いくつになっても、たとえ死んでも、孫がかわいいというじいちゃんの慈愛に、敬服。
 その他の話も粒ぞろいで甲乙付け難く、泣かされた。
95点
朝倉卓弥(宝島社)

 如月は才能あるピアニストだったが、強盗事件に巻き込まれて、一本の指を失う。事件のときに彼が助けた少女・千織は障害のある身ながらも、ピアノに天才的な才能を示す。
 二人は各地を巡って、千織のピアノ演奏を披露していたが、とある診療所で突発的な事故に遭遇し……。
 あまり現実的でない設定なのだが、それを忘れさせるほど、ストーリーに勢いがある。面白い。

 如月の一人称で物語りは進むのだが、彼の印象は薄い。その代わり、診療所の職員である真理子の存在感が大きい。
 雄弁な彼女は、何かの隙間を埋めるかのように語り続ける。その独白には涙を誘われたが、同時にうるささも感じてしまった。
75点
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