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よしなしごとども 書きつくるなり
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薄井ゆうじ(光文社)

 短編集。
 『湾岸少女』を紹介しよう。
 環境コンサルタントである紫穂のもとに、あるとき羽美という少女が訪ねてくる。少女は父親を探しているのだという。紫穂の恋人でもある父親を。

 風景の描写がとても独創的ですばらしく、ここまで机上で描けるものかと感嘆した。
 『打ち寄せる波は、紙をくしゃりとまるめたときのような小さな音しか立てない』……こんな表現が特に気に入った。
 ただ、独創的なだけに、読む側にとって少しでも的外れだったりすると、途端にストーリーの流れを遮断してしまう。いわば諸刃の剣でもあるように思えた。それは私の場合はほんの数箇所ではあったが。
70点
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宇佐美游(角川書店)

 ホステスをしながら貯めたお金でアメリカ留学を果たした美和子。彼女の夢は翻訳家になること。
 そんな彼女の前に浪江という女性が現れる。平気で嘘を付く浪江に美和子は振り回されるが、どうしても彼女を切り捨てることができないのだった。

 美和子のホステス時代の話がとても興味深かった。銀座の高級クラブといえども、女性同士の熾烈な権力争いがあり、いろいろな掟があるのだった。
 また浪江の奔放さには、美和子ならずとも圧倒されるであろう。まさに男性を狙い撃ちするそのたくましさには唖然とした。
 でもこういう女性は確かにいる。そう思わせる描写力がこの作品には備わっている。
55点
イワサキユキオ(東京糸井重里事務所)

 「ほぼ日刊イトイ新聞」にて連載されたコンテンツをまとめたのが本書。
 ジャック・ラッセル・テリアのルーシーが産んだ仔犬たち。筆者はニコ・サンコ・ヨンコと名付け、それぞれの成長を温かく見守る。
 仔犬たちのかわいらしさは、本当に表現のしようもない。プリッとしたピンク色の肉球。純白の毛にこげ茶のブチ。仰向けで眠る姿は、脱力するほど愛らしい。
 この本、サイズがちょうどCDのジャケットと同じなのだが、それが大き過ぎず小さ過ぎず、犬たちの魅力を存分に引き出しているようだ。
 そして巻末にあるエピソードがまた良い。ルーシーとの出会いから、出産、仔犬たちの現在までが少し詳しく書かれていて、ある悲しい出来事のところでは、思わず涙してしまった。
80点
岩合光昭・岩合日出子(新潮社)

 写真と文章で綴る日本犬の今。
 可愛い。とにかく可愛い。しかも凛々しくてカッコいい。
 ふわっふわの紀州犬の子犬。黒い毛並みが神々しいほどの甲斐犬。そして柴犬。ウチで飼っているというひいき目を差し引いても美しい犬だと思う。
 ピンと立った耳。つやつやと光る鼻。くるりと丸まった尾。素直な性格をそのまま現したような、つぶらな瞳。本当に見飽きない写真ばかりだ。
 ただ惜しいかな、文章には癖があって少し分かりづらかった。
80点
岩井志麻子(中央公論新社)

 大正時代。苦労知らずで美しい「明子」は幸せな結婚生活を営んでいた。
 だが、学生時代の友人「清子」を、夫の会社の事務員として紹介してから、その幸せに暗い影が落ちるはじめる。

 明るくて華やかで、甘え上手な明子。その反面、いや、それゆえ傲慢で他人の痛みには気付こうともしない性格なのである。
 こういう女性は私がもっとも嫌悪するタイプである。「悪気は無いの」ですべて済まそうとする、その根性を叩きなおしてやりたくなる。
 一方清子も、共感はできるが好きにはなれないタイプである。
 だが、この作品自体は非常に気に入った。
 主人公二人の自負心、間に立つ男性の優しさという名の優柔不断さ。そして大正という、自由と封建がないまぜになった時代。すべてがきっちりと描かれている。
90点
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