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よしなしごとども 書きつくるなり
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桜木紫乃(集英社)

 北海道の釧路湿原を見下ろす位置に建つラブホテル「ホテルローヤル」。客、経営者、従業員と視点を変えて語られる7つの物語。

ラブホ、で期待するような淫靡な作品はなくて、どれも何かしらの悲しみを背負った人々の物語となっています。
一番心に響いたのは『星を見ていた』。
60になるミコはホテルローヤルで清掃のパートをしています。中卒で働きづめに働いて、怠け者のダンナを支えていて、3人の子どもは家に寄り付きもしない。
自分の人生なんて無くて、でも懸命に毎日生きてて、なのにさらに悲惨な目に遭う……よくあるパターンなんだけど、善良なミコの初・絶望が胸に迫りました。
ラストシーンでの星の瞬きが、明日への希望ってことかな、ちとクサいけどさ。
85点

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坂口安吾(角川書店)

 短編集。
 表題作の「肝臓先生」。熱血町医者の赤城は、別名「肝臓先生」と呼ばれていた。
 彼のところへ来る患者のほとんどが肝臓病と診断されたからだ。それは、彼の見立てが悪かった訳ではなく、戦時中における肝臓病の蔓延の始まりだったのであった。

 ひたむきで優しい先生の生き方に、心打たれた。あまりの肝臓病患者の多さに困惑する彼が、恩師の謝恩会で他の医師から激励されるシーンなどは、私も安堵し、嬉しくなった。
 他に「行雲流水」も、コミカルで、ひやりとした怖さもあって、良かった。
65点
桜庭一樹(角川書店)

 中学1年の山田なぎさ。彼女のクラスに転校生がやってくる。名前は海野藻屑。美少女で嘘つきで「自分は人魚だ」と言い張る彼女は、なぎさに近付いてくる……。

 母親のパート収入と生活保護で暮らすなぎさの家は、恵まれているとは言えない。いっぽう父親に虐待されているらしい藻屑も、あやうい毎日を過ごしている。二人に共通しているのは、幼すぎて自分の境遇を変えられないという点だ。そう、中学生には何も出来ない。その絶望感が小説全体に暗い影を落としている。読んでいて息が詰まるような、暗い影。
 やがて物語は信じられないような悲劇へと突き進んでゆく。もう終わっていること(冒頭で藻屑は遺体となって発見されている)なのに、彼女の「生」を願わずにはいられなかった。
 本当に藻屑のように軽んじられた彼女の命。現実の世界でも親の虐待によって死んでゆく命がある。どんな可能性を秘めているか分からない子どもを殺すということは、世界の未来の一部を殺しているということを親は自覚すべきであろう。
90点
沙藤一樹(角川書店)

 近未来、ゴミに溢れた横浜ベイブリッジに少年が置き去りにされる。彼は何とかそこで生きぬこうとするが……。
 こういうのは嫌いだ。
 で、終わりにしたいほど。虫団子を作って食べただの、折れた骨が、皮を突き破って飛び出してただの。少し前の「日本ホラー小説大賞短編賞」ということで読んだのだが、これはグロ過ぎ。
10点
佐藤多佳子(新潮社)

 噺家である三つ葉のもとに、落語を教えて欲しいと頼む人が現れる。
 吃音に悩むテニスコーチ、イジメにあっている小学生、ひねくれ者の美人OL、ド下手な野球解説者。しゃべることに神経をすり減らす四人は、落語によって救われるのか。

 四人と三つ葉が、もどかしいほどにゆっくりと打ち解けあってゆくさまが、ほほえましくて良かった。忘年会でくつろぐ四人を見て三つ葉が感慨にふけるシーンは、温かい雰囲気に満ちていて、私も泣きそうな気分になった。

 私もしゃべることが苦手なので、いろいろと期待して読んだが、そういうことに指針を与えてはくれなかった。
 しかしながら、自信のない人間は自分を肯定し、ダメ出しならぬ「良し出し」を自分にしてあげることが肝要という部分は、心に響いた。
65点
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