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よしなしごとども 書きつくるなり
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小山田浩子(新潮社)

短編集。15の作品が収められている。
どれもこれも、どこか不思議で夢のようで、それでいて既視感のある話だった。
日常にある虫や花や会話が書かれているせいか。

最後に収められている「家グモ」が面白かった。
語り手のみゆきの家には、手のひらサイズのクモが居ついているという。長い8本の脚を駆使して素早く移動するクモ。読んでいるだけでぞっとした。
彼女の目を通した景色にも、不穏な空気がただよう。
洗濯物の取り込みをお願いしても渋る夫。
エレベーターで会った、隣に住む母娘。4歳ぐらいの女の子のわがままとうるささ。
妊婦である友人とのランチ。友人の化粧やアクセサリーの描写。
淡々と会話や目に付いたことを書いているだけなのに、ほんのりと漂う悪意、は言い過ぎか、良からぬことが起きそうな予兆が漂うのだ。

川上弘美氏も不思議話を書くが、こちらのほうが好きだと思った。
川上氏には不穏さが足りないのかもしれない。
90点

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小保方晴子(講談社)

あの大騒動の当事者が綴った、衝撃の手記。
リケジョの星などと持ち上げられて、間もなく地獄の底へと突き落とされた小保方氏。その絶望が余すところなく描かれています。

まず、高校受験に失敗した話から始まっています。挫折感を味わったと語っていますが、そのあとは早大→院に進んで東京女子医大の研修生→ハーバード大への短期留学と、華々しい経歴。
特に留学する部分は、彼女が「アメリカ行きたい! でもお金ない!」表明をしただけで周りの先生たちが段取りしてくれました。
留学ってこんなに簡単なの? 超優秀だから? そのあたりは不明瞭でした。

で、留学先でプレゼンすりゃあ、教授に「過去15年で最高のプレゼンだった」と言わしめ、留学期間の延長と生活費の援助まで申し出てもらって、まさに順風満帆でした。
このあたりの描写は本当に楽しげで、自慢じゃないの事実なの、うふふ、と彼女の声が聞こえてくるようでした。

2014年1月、あのSTAP細胞論文の記者会見が開かれ、その1週間後には過去の論文に疑義がある、と言い出す人たちが出現します。
そのスピード感たるや。
彼女の、たぶん長所であった「ふわふわっと生きてきて結果うまくいってしまった」部分が、ここからすべて裏目に出ます。
最終確認を怠った、疑問点をうやむやにしてしまった、そんな積み重ねが彼女を窮地に追い込みます。

でもですよ。
あそこまでひどいバッシングを受けるほど、彼女がやったことは悪だったのか? と問われると、この本を読んだ後では「No」と言うしかないです。
まずマスコミがひどすぎる。
本当なの? と疑うほどひどすぎる。
実名で出てくる毎日新聞記者の非道っぷり、NHKの執拗な取材、部数が欲しくて記事を書いているという文春の言い分……取材という名の天下御免っぷりに驚愕しました。

次にやっぱり山梨大の若山先生。
小保方氏は恩義 も 感じているようで、なるべく感情を交えずに事実だけを書こうとしているようですが、とにかく彼の嘘と保身がこの大騒動を扇動したのは間違いないです。

最後に思ったことは、研究者、マスコミ、大学って結論ありきなのだな、ということです。
こういう実験結果が欲しいとなったら、そぐわない結果は捨ててしまう研究者。
小保方氏を悪人に仕立てるために躍起になるマスコミ。
世間が騒いでいるからと、博士号を取り上げることしか考えない大学。
この本が出ても誰も反論してないってことは、そういうことだよね。

なんとなーく小保方氏っていけ好かないと思っていましたが、反省しました。
またいつか、好きな研究ができるといいですね、と応援したくなりましたです。


乙一(角川書店)

 連作短編集。
 僕とクラスメートの森野夜は、共通する習性で繋がっていた。人間の持つどす黒い残酷性に、興味を惹かれる習性である。

 いろいろなタイプの「異常者」が登場するのだが、みな一様に落ち着いていて、決して快楽的ではない。淡々と自分がしたいことをこなしてゆく……たとえ殺人であっても。そんな雰囲気である。
 その独特の静けさが、逆に彼らの禍々しさを際立たせてもいる。
 早く続きが読みたいと思わせる筆者の腕は素晴らしいが、ただ単行本に「あとがき」を書くのはいかがなものか。潔さが足りなくはないだろうか。
 私は、執筆活動の裏話を、こういう形で読みたくはない。
80点
乙一(幻冬舎)

 小学五年生のマサオは、新しく担任になった男性教師に目の敵にされ、クラスのみんなからも蔑まれるようになる。
 日々悩むマサオは、あるとき顔が真っ青な男の子を見掛けるようになる。他の誰にも見えていないらしい「アオ」。マサオを見つめるアオの正体とは。

 人格の破綻している教師。エスカレートしてゆくクラスメート。物語がどこへ着地するのか、固唾をのんで読み進めた。
 常に緊張を強いられるマサオの恐怖が、切々と伝わってきた。
 文章はマサオの一人称で書かれているのだが、時として小学生らしからぬ単語が出てくる。その理由は、あとがきに明記されているので、そこまで読めば誰しも納得できるだろう。
75点
折原一(講談社)

 山本は「月刊推理新人賞」に応募すべく『幻の女』を書き上げた。作品には絶対の自信があった。が、ミスと偶然が重なって、作品は盗作されてしまう。犯人は一体誰なのか?

 極端に評価が分かれるという叙述トリック。本書はそれを用いて書かれている。私はと言えば、この手法は好きではないかもしれない。ピンとこないというか、読み終わった瞬間の開放感がないのが愉しくなかった。一拍おいてから「あぁ、そういうこと」なんて思うのは、愉しくない。
 それから、手記のかたちをとっているので、わざとそうしているのかもしれないが、文章が素人くさい感じがした。スピード感があって読みやすいのだが、平凡な表現でさらっと書かれている部分が多く、深みがない。
60点
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