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よしなしごとども 書きつくるなり
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窪 美澄(文藝春秋社)

 世間を震撼させた少年Aの酒鬼薔薇事件。彼を崇拝する少女、被害者遺族、事件を追いかける女性作家。少年Aの周りで彼らの人生が交錯してゆく……。

 これは問題作である。フィクションだと思われるが少年A目線のところもあり、それがとても生々しくて衝撃的だった。なぜ人を殺したのかというと、人の中身を見たかった、それを見ることに性的な興奮を覚えた、と。
 書いていいの? レベルの内容で吐き気がした。

 少年Aをアイドルのように崇拝する少女にも嫌悪感しかわかなかった。外見だけに惹かれて追っかけまでしてしまう心情。生まれ変わったら彼の母親になりたいという心情。瞳をキラキラさせる恋する乙女ふうに書かれているが、そういう人間の心情など知りたくもないと思った。

 きっと今現在も少年Aは誰か他人の監視のもとに生きているのかもしれない。多大な費用を掛けて更生させ(させたつもり?)、そのあとに何が生まれているのか。誰かバカにも分かるように説明して欲しい……少なくともこの作品からは答えは見いだせなかった。

採点不能

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久坂部羊(幻冬舎)

 麻痺して動かなくなり、回復の見込みも無い手足のことを廃用身という。漆原医師は、本人のみならず介護者にも負担増となるその廃用身を、切断することを思い付く。
 その画期的な方法は、行き詰まりを見せている老人介護に、希望の光を投げかけたかのように見えたが……。

 ノンフィクション? と思わせるような、凝った作りになっている。
 たぶん一部は真実なのだろう――介護者の1/3が、お年寄りに憎しみを抱いている、想像を絶する虐待が行われている等々――恐ろしいことだが。
 さて、果たしてこの療法は是か非か。筆者はどちらとも断言はしていない。
 が、漆原の持つ根源的な闇の部分をこういうふうに描いたということは、心情的に非なのかもしれない。
 だけれど近い将来、老人介護が立ち行かなくなったら、非とばかりも言ってられないのでは? そんな問いかけを発しているようでもある。
70点
鯨統一郎(光文社)

 童話作家を夢見て大手企業を辞めた研二。彼の妻稔美と息子の虹野がある日何者かに誘拐されてしまう。
 犯人の目的は、稔美の記憶の底にある、宮沢賢治の遺した「七色のダイヤモンド」の隠し場所である。

 組織犯罪あり、童話の解説あり、妖精の登場あり、レイプシーンあり、と内容は多彩である。
 しかし、散漫な印象はなく、加えてとても理解しやすい文章である。
 ラスト、カリスマ性に欠ける犯行首謀者に少し失望した。部下たちがなぜ彼を崇拝できたのか不思議である。
 それと揚げ足を取るようだが、生活苦ゆえ米に玄米や餅米を入れていたという記述はおかしい。一般的に普通米より餅米のほうが高価であるはずだ。
75点
久世光彦(中央公論新社)

 短編集。桃にまつわる8つの物語が収められている。
 『桃――お葉の匂い』。女衒を生業とする「私」は、ふとしたことからお葉という女と一緒に暮らすようになる。
 だがあるとき、お葉は忽然と姿を消してしまう。崩れかけた大きな桃を残して……。

 暗く淫らな話が多い短編集だが、これも例外ではない。女郎屋の女、妾、立ちん坊をする女。「私」の周りはそういう女たちばかり。だが不思議に嫌悪感は湧いてこない。
 ずっと漂い続ける桃の匂いのせいか。桔梗納戸、苔色、赤朽葉、藤色……ちりばめられた色の名前の、美しさゆえか。
 薄気味悪いストーリーだが、読後感は悪くない。
70点
久世光彦(新潮社)

 「私」は十四歳のころに友人達と狂女の「しーちゃん」を輪姦してしまう。その後彼女は誰の子とも分からない子供を出産し、やがて早死にしてしまう。「私」は四十年ぶりに故郷へ舞い戻り、当時の記憶を探るが……。

 テーマは暗いが、そこはかとなく軽やかな印象を受ける作品である。
 最も印象深いのは「私」が回想する、事件のときの「しーちゃん」である。彼女の身に纏っていたもの、彼女の行動、彼女の身体。執拗にその描写が繰り返される。
 それは「いやらしい」と片付けてしまうのが憚られるくらい、ひたむきで切ない。
70点
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