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よしなしごとども 書きつくるなり
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武田百合子(中央公論新社)

1969年、筆者は夫である武田泰淳と、その友人である竹内好(中国文学者)とロシア旅行に出掛ける。旅行社の企画による「白夜祭とシルクロードの旅」は総勢10名。筆者の体験を克明に綴った1冊。

筆者の素直なまなざしが、あらゆる出来事をいきいきとさせる。
乗り物酔いで気分が悪く、食事中にトイレに駆け込んで嘔吐したが、それですっきりして食事を続けたという筆者。どこでも生水を飲んでしまうのだそうで、その堅強さに驚いた。
またあるときは態度が悪い現地ガイドの女性に、別れ際に日本語でつぶやく。「スパシーバ。あなたはしんからブスね」。ほくそ笑む筆者が目に浮かんだ。

夫や竹内氏に対する観察眼も愉快だ。ポルノ雑誌をみつけてうれしそうに買い求める両氏。でも空港で没収されるかも? と思い悩む様が描かれる。そんなくだらない話も大真面目に淡々と書かれていて面白かった。

他には観光地で見物したものはもちろん、食事のメニューから買った物の値段まで、細かく書かれていて興味深かった。当時のロシアや北欧の有り様を覗き見できた気がした。
100点

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田口ランディ(幻冬舎)

 短編集。どれもこれも最後の二、三行部分で鼻の奥がつんとした。
 特に気に入ったのは「縁切り神社」。これは実在の神社? 誰かと縁を切りたい、あるいは誰かと誰かの縁を切って欲しい、そんな絵馬がたくさんぶら下がっている風景。
 「人の悪意に触れると体は重くなる」という表現が出てくるが、非常に共感できる。ネット上の荒れてる掲示板なぞ、読んでいるだけで、毛穴がひとつづつふさがれていくような圧迫感を感じるものである。

 逆にイマイチだったのは「エイプリルフールの女」。本妻の葬式を見に行く愛人という設定自体が、すでに嫌だ。こういう明らかに立場をわきまえない女は、何を語っても聞く耳持たんぞ、私は。
75点
田口ランディ(幻冬舎)

 本の帯に「村上龍氏絶賛!」と書いてあるが、私も同感である。おもしろ過ぎる。価値ある1500円・税別。今、興奮冷め遣らぬままに書いてるから乱筆乱文お許し下され。
 こういう作品は読み終わるのが悲しくなる。加えて「まさかつまらないラストじゃないでしょうね」と構えていたら、ラストも「おおー、こう来たか」と大満足。

 内容は、奇妙な死に方をした兄について、その妹がいろいろ調べていくうちに、自分が特殊な人間であることに気付く。いるはずのない人間を見たり、ガンに侵されている人の死臭を嗅ぎ取ったり。で自分はコンセント・プラグ・やっぱりコンセントなんだ!って理解する。
 あーもうまどろっこしい。とにかく誰彼の見境なく推薦したい一冊である。
95点
嶽本野ばら(小学館)

 実在するカフェーを舞台に「僕」と「君」が織り成す、短い物語の数々。
 青臭い小説、と切って捨てるのは簡単だが、そうさせない真摯さがこの作品集にはある。時流に乗ったり、客に媚びたりせずに、己のスタンスで存在し続けるカフェー。それは物語に登場する「僕」や「君」にとてもよく似ている。

 12の短編の中で、私が特に気に入ったのは「品性のある制服と、品性のある歯車」。その中の一節が、心に残った。
 『品性を打ち捨ててまで、手に入れなければならないものなぞ、この世に存在するものですか』。
 品性。今どき、捨て去ってしまった、否、最初から持ち合わせていない人のほうが多い気がする。
75点
嶽本野ばら(小学館)

 高校生の「私」は、パンクバンドのボーカル「ミシン」に恋焦がれ、なんとか彼女と接触したいと痛切に願うようになる。
 などと粗筋を書くと、まるで陳腐な話に聞こえるが、決してそんなことはない。作品に漂う透明感や、むき出しでひりつくような「私」の想いは、まるで濃霧のように柔らかく、だが確実に私の心を濡らした。
 それから「私」が「MILK」というブランドにのめり込んでいく描写も、私には非常に共感できた。買っても買っても欲しい。中毒になってこそ、ブランドのパワーに勝てるのだと思う。
80点
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