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よしなしごとども 書きつくるなり
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小川洋子(講談社)

ほんの十数メートルの、薄暗くて小さなアーケード。ひとつひとつの店も、狭くて、扱っている品もよく分からない物ばかり。
でもお客さんは、来る。彼らの探し物を見付けに。

買ったはいいが、つまらなそうな気がして放置していた。ようやく読んだら、予想外の面白さ。
店主たちも客たちも、どこかおかしな人ばかりだ。しかも「変なのー。ふふっ」という感じではなく、不穏な「変」。
「あっという間に死んでしまった」「ナイフで女優に切りつけて」「ホルマリン漬け」「義眼屋」と、普通ではない言葉が、普通な顔をして並んでいる。退屈な日常にふと現れる狂気が、さりげなく描かれている。
少しずつ繋がりがある連作短編、という形態も私好みでした。
80点


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小川洋子(集英社)

 どうやら作家であるらしい「私」の日記。
 苔料理専門店など、非現実的な設定があるかと思えば、記憶の中にだけある「有名な作家」の作品を盗作してしまう話など、リアルさにヒヤリとさせられる部分もあったり。
 小さな幻想を無理なく積み重ねていくこの手法、小川氏のセンスが光る。

 時間も場所もゆらゆらと変わってゆく。が、「私」の適応力は一定で、何が起きても適当にやり過ごす。「私」の飄々とした物言いに、筆者である小川氏の雰囲気を重ねてみたが、大きく外れてはいない気がする。
70点


小川洋子(朝日新聞出版)

 兄と7つ年下の弟。兄はあるときを境に独自の言語で喋るようになった。意味不明な言語は、弟にだけ理解できた。成長した彼らは2人だけで暮らした。働けない兄にかわって、弟は企業のゲストハウスの管理人となり、生活を支えるのだった……。
 何という不思議なストーリーなのだろう。小さくて、繊細で、はかない物語。それは言い換えると、せせこましくて、読んですぐ忘れてしまうような物語だ。どちらに転ぶかは、読み手次第かもしれない。
 鳥に執着する兄は、優しい弟に守られて、やっと生きている。でも本人にその自覚は無いらしく、彼は自由にふるまう。2人で旅行の計画を立て、準備万端整えたのにドタキャンしてみたり。弟は許しても、私のイライラはゆっくりと積もってゆく。
 結局、兄は(弟も?)イマドキの言葉で表すなら重度のコミュニケーション障害のようだ。彼らは自分たちだけの狭い世界で生きることを望み、他人の干渉を嫌う。
 「本で紹介していただくようなことは何も無いのです」という2人の困惑が、そのままこの作品の印象の薄さ、平板さに直結しているような気がした。
55点
 
小川洋子(河出書房新社)
 
 小川氏が選んだ、小川氏が偏愛する16の短編。
 僭越ながら、とても小川氏らしい16個だな、と思った。どこか奇妙な感じ、危うい感じの短編が多い。それはすなわち、小川氏がよく書かれる小説に通じるものがある。
 各作品のあとにある短評も良かった。彼女ほどの作家でも、武田百合子に「……を描いて欲しい」と想い、森茉莉の小説の一行は「宝石のようだ」と感嘆する。そこに驚いた。
75点
 
岡田斗司夫(幻冬舎)

 朝日新聞に掲載された人生相談をまとめたのが本書。
 筆者がどのように回答を導き出しているのか、その道筋が丁寧に書かれている。例として面白かったのが「思考フレームの拡大」。
 会社の若手社員がツイッターをしているのを見付けた。会社のこと、上司の悪口などが書かれていた。自分は彼に注意すべきか? という相談。それに対しての答えは「会社の上司としてではなく、同じネットユーザーとして彼に言うべき」というもの。
 社会的な立場より前に、まず俺たちはネット市民である、というように思考フレームを拡大すると答えが見えてくるという。抜群の説得力である。実はこの話には後日談があり、相談者は若手社員に、回答にあったような注意をし、彼も素直にそれを聞き入れ会社のくだらないことは書かなくなったそう。頭ごなしに注意していたら、このような結果は生まれなかったかもしれない。八方まるく収まってめでたしめでたし、である。
 他にも興味深い相談、回答がたくさん掲載されていて、人生相談好きにとってはたまらない一冊であった。

85点
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