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よしなしごとども 書きつくるなり
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ケヴィン・ウィルソン(東京創元社)

11の短編が収められている。
表題作の「地球の中心までトンネルを掘る」。
大学を卒業した3人の男女。無気力な日々を送っていたが、ある日突然、裏庭に穴を掘ることを思いつく。
一心不乱に穴を掘り続ける3人。いろいろな困難――掘った土の始末やら大きな岩やら――にぶつかるも乗り越えて、穴というかトンネルはどんどん拡張されてゆくが……。
学校は出たものの、その後どう生きていけばいいのか分からず、現実を棚上げして何かに没頭する。そんな生き方をしている若者に刺さるストーリーではないだろうか。
逃げてもいい、けれどその後は? の問いに対するひとつの答えも描かれている。

ほかに、親の相続権を奇妙なゲームで争うこととなった4兄弟の醜悪な姿を描いた「ツルの舞う家」が愉快だった。
4兄弟の祖母が日本人という設定だが、あまり好意的には描かれていない点が少し引っかかった。

クイズボウルに出場予定の2人の高校生。イケてない彼らは視聴覚機材室で日々練習に余念がなかったが、じゃれ合っているうちにキスをしてしまい……「モータルコンバット」。
2人の衝動、とまどい、哀しみが痛いほど伝わってきた。
95点

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レイ・ヴクサヴィッチ(東京創元社)

34の短編が収められている作品集。
幻想的だったり、近未来的だったり。面白くて胸躍るようだったり、全然つまらなくて読み飛ばしたり。

『次善の策』を紹介しよう。
死んだら遺体は宇宙へ打ち上げてほしいと言い残して亡くなったティム。恋人だったデボラは、彼の望みを何とかかなえようとするが……。
とんでもない遺言のおかげで、残された者が苦労するというブラックユーモアだと思われるが、最近では本当に宇宙葬なるものがあるようだ。
遺体ではなく遺灰? のようだが、肉体は滅びても永遠に宇宙空間を漂っていたい、ということだろうか。
それ、意味ある?

他には、自分のいびきを録音しようとしたら、おかしな声が入っていたため、その正体をつきとめようと悪戦苦闘する『ささやき』も面白かった。
65点

ピエール・ルメートル(早川書房)

もうすぐ大戦が終わろうとしていた1918年。アルベールは上官プラデルの策略で死にかけるが、九死に一生を得る。いっぽう、彼を助けたエドゥアールは大けがを負う。
戦後、エドゥアールの面倒をみながら、アルベールは必死に働く。そんなとき、エドゥアールが大がかりな詐欺を計画する。アルベールは初めは否定的であったが、次第にエドゥアールの提案にのめりこんでいった……。

魅力ある登場人物はゼロ、どいつもこいつも癖がありすぎ。アルベールは信じがたいチキンだし。エドゥアールは今でいうこじらせ男子だし。プラデルに至っては人間のクズだし。
でも最低な彼らの言動から目が離せなくなるんだな。次は何をやらかしてくれるやら、って。

上下巻、なかなかの長さの作品でしたが、一番印象深かったのは、プラデルが奥さんに最後通牒をつきつけられるシーン。
浮気を重ねたプラデル、知ってて奥さんが彼を泳がせていたのは

(以下、ネタバレかな?)
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(早川書房)

 16歳になったコーティーは、自ら宇宙船を駆って銀河へ飛び立った。意気揚々と向かった宇宙で彼女を待ち受けていたのは、脳の中にエイリアンが入り込むという、摩訶不思議な体験だった……。

 自分の頭から別人の声が聞こえる。それが幻聴じゃないとコーティーは速やかに判断したが、自分だったらパニックになりそうである。
 基本的には聡明で気のいいコーティー。だがそこはそれ16歳、彼女の感情はくるくると変化する。好奇心で突っ走ったり、虚勢を張ったり、不安でいっぱいになったり。少し生意気だけれど、読み進むうちに彼女を応援する気持ちになっていった。
 だから結末は……ってこれ以上は書けないが、SFにしてはウエットな作品であった。
65点

F・W・クロフツ(東京創元社)

 埠頭から荷揚げされた樽には、金貨と女性の遺体が入っていた。犯人の目的は何なのか?

 解説に冒頭のテンポが遅いと書かれていたので覚悟して読み始めたが、まったくそんなことはなかった。
 樽の受取人である男は、果たして犯人なのか? 警部と一緒に考えを巡らすのは刺激的で、退屈しらずであった。
 後半はさらにスピーディーとなり、容疑者も2人に絞られて推理する楽しさがいや増した。
 警部が上司に手紙で報告したり、参考人を探すために新聞に広告を打ったり、そのあたりはさすがにのんびりとした感じを受けた。だが、いろいろなことがその場で分かってしまうデジタルな現代より、そちらのほうが小説向きであるのかもしれない。
85点


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