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よしなしごとども 書きつくるなり
伊岡瞬(角川書店)

小学5年生だった圭輔は、自宅が全焼して両親を失う。その後身を寄せた親戚の家では奴隷のような生活を強いられる。やがて弁護士となった彼は、ある男に弁護を依頼される。その男こそが、圭輔をいじめぬいた同い年で親戚の達也であった……。

初見の作家だが、けっこう好きかも。
意味のない風景描写などがなく、まるで粗筋を語るようにストーリーが展開するところとか。
そうは言っても人物の描写はきっちりしていて、特に達也の描き方が気持ち悪くなるほど良かった(褒めてます)。人が苦しむのを見るのが何より好きで、ずる賢くて堂々としている、良心のかけらもない。この造形にしてやられた。
物語としても楽しめた。圭輔が窮地に陥ると必ず助っ人が現れるのが少しご都合主義っぽくはあったが、裁判が二転三転して息をもつかせぬ展開、これぞミステリーの醍醐味。
95点

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池波正太郎(新潮社)

 食についてのエッセイ。
 昭和四十年代に書かれた作品なので、時代的なズレはある。例えばキーウィが珍菓として登場したりする。
 しかしながら、本質的な部分は少しも色褪せておらず、「食」に興味の薄い私でさえとても楽しんで読むことができた。
 筆者が小学生のときの担任がカレーライスをご馳走してくれた話は、私も似たような経験があるので、胸に迫るものがあった。
75点
池田晶子(毎日新聞社)

 筆者が14歳の「君」に語りかける、生き方についての16の話。
 あとがきに「読みやすくエッセイふうに書いてみました」とあるが、中学生にはやっぱり難しいのではないだろうか。難しい言葉は確かにないが、筆者の真意をくみとって、深く考えることがはたして14歳に可能だろうか。まぁ余計なお世話だが。
 とりあえず「無理」と思ったら「はじめに」のところだけでも読むといいかもしれない。ここに筆者の言いたいことが凝縮されているような気がする。

 私が一番惹き付けられたのは「嫌いな人は嫌いでいい」というくだり。そのことにこだわらず、ただ存在だけ認めればいい、と筆者は言う。罪を憎んで人を憎まず(ちょっと違う?)、それが出来たら人生は楽になるかもしれない。
70点
池井戸潤(講談社)

 銀行にまつわる五つの短編。意外にも表題作が最もつまらなかった。
 「現金その場かぎり」を紹介しよう。閉店後のとある銀行で、300万もの現金が不足していることが判明した。紛失か盗難か。行員のなかに、犯人がいるのか。いるとしたら、その手口は?
 とても短い作品だが、中身は濃い。現金が消えたトリックも意表を突いているし、ラストも手に汗握る展開で、とても引き込まれた。
 ひとついちゃもんを付けるなら、私物検査のシーン。「女子ロッカーの独特の雰囲気と酸っぱい匂い」という記述は少々陳腐な気がした。実際、そんな匂いなどしないものである。
80点

五十嵐貴久(幻冬舎)

 インターネットの出会い系サイトで、気軽な浮気を楽しんでいた本間。しかし、あるときリカと名乗る女性と出会ってから、彼の愉しみは恐怖へと変貌していった。

 ざっと流し読みする分には面白い作品かもしれない。だが、私のような素人にもはっきりと分かる粗さがある。
 リカが本間の娘にした行為が、最も解せなかった。その意味の説明が曖昧すぎる。それからリカの設定があまりにも人間離れしている。実は彼女はサイボーグだった、なんてオチがつくのかと身構えてしまった。
 全体的に作者が慌てて書いているような印象を受けた。ホラー、サスペンスは読者を焦らしてなんぼ、であろう。
65点
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