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よしなしごとども 書きつくるなり
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フレドリック・ブラウン(東京創元社)

短編集。18個の短編が収められている。

『闇の女』
銀行強盗があった日、プランデル夫人の下宿屋に部屋を借りたいという女性がやってくる。夜でも照明を付けない怪しい女性。彼女は銀行強盗の一味なのか……。
短編なのに情報量が凄まじい。女性の正体、下宿屋に来た刑事たちの言動、なぜ女性は明かりを付けなかったのか。すべてが一切の過不足なく描かれている。

ほかに面白かったのは、火星が衝突して世界が終わるという偽の号外を作って一人の男をだまそうとした人々の顛末、『世界が終わった夜』。
駅のホームに佇む男は殺人犯かもしれないという。しかし耳が聞こえないという彼の主張があって、事件は闇に葬られようとしている。男は本当に聾者なのか、『叫べ、沈黙よ』。

こんな短編の名手を知らずにいたとは。これは新訳だそうで、次の短編集も控えているということなので楽しみに待ちたいと思った。
100点

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ジョージ・ソーンダーズ(河出書房新社)

国民が一度に一人しか入れない狭小国、内ホーナー国。それを取り囲む外ホーナー国。2国の仲はあまりよろしくなかった。
ある時、外ホーナー人であるフィルが、内ホーナー国から税金を徴収しようと言い始める。ぱっとしない中年男だったフィル。しかし彼の熱弁に人々の心は動かされて……。

突拍子もない話なのだが、何かの比喩? の話なのかと思えてくる。
口先三寸で皆の支持を得るフィル。国民のわずかな不満を拡大して代弁し、賛同を得るフィル。
こういう政治家は確かにいる。

訳者が岸本佐知子氏なので、キテレツな部分もするする読めた。
フィルの脳は巨大なスライド・ラックに固定されているが、ボルトがときどき外れて脳が地面にどさっと落ちるのだそう。
映像化は難しそうだが絵本ならいけそう。
90点

ブリジット・オベール(早川書房)

 医者であるマーチ博士には、四つ子の息子達がいた。とてもよく似た、美しい四人。でもその中の一人は殺人鬼だった。彼は殺人日記をつけていて、それをメイドの娘が見つけて盗み読みしてしまう。

 殺人者の日記とメイドの日記が交互に書かれているが、それが面白かった。残忍で狡猾な殺人者、饒舌で低レベルなメイド。この対比が効いている。ただ殺人者の正体は……ちょっと不満。手法として、ルール違反すれすれではないだろうか。
60点
カーター・ディクスン(早川書房)

 英国の辺鄙な村に、後家と呼ばれる奇妙な岩があった。
 あるとき、村中の人々に中傷の手紙が届きだし、ついには自殺者まで出てしまう。手紙には「後家より」と署名がなされていたが、その正体は誰なのか。

 バカミスの原点との評もあるというこの作品。読んで納得、である。
 ストーリーにはひねりがなく、セリフには無駄なひねりが多すぎで、読みづらいことこの上ない。
 また、犯人が自らの犯行について口を滑らすシーンがあるのだが、これは誰が読んでもそれと気付くだろう。
30点
フョードル・ミハイロヴィッチ・ドストエフスキー(新潮社)

 役所に30年あまりも勤める、無学で貧しい男、マカール・ジェーヴシキン。病弱な薄幸の女、ワーレンカ。
 二人の往復書簡によってストーリーが進んでゆく。ドストエフスキーの処女作。

 貧しいにもほどがある、というほどの貧しさ。マカールもワーレンカも、お互いの窮状を察しては、なけなしのお金を送りあう。だが次々と問題が起こり、不幸が連鎖し、周囲の人々も困窮してゆく。読んでいて胸が苦しくなった。
 マカールの書いた「貧乏人というものはぼろ屑にも劣る」という一節が、この物語のすべてを語っているかのようだ。
 幾多の屈辱に耐え、消耗していく人々は、まるで「生きる資格もない」と神に見捨てられたかのようである。
50点
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