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よしなしごとども 書きつくるなり
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絲山秋子(講談社)

 日向子は、高校生のときに小田切に出会った。以来、12年間というもの、彼にいいように使われてきた。付き合っているような、いないような、そんな状態がいつまでも続いた。
 切羽詰って「寝てください」とお願いしても断られ、結婚する気はないと言われ……それでも日向子は彼から離れられないのだった。

 と、こうして粗筋を書いていると、日向子という女性が、なおさら理解し難く感じられてくる。
 小田切の薄っぺらい人間性に気付きながら、見て見ぬふりをする。そんな彼にへつらう。いくら好きでもプライドはないのか? と思ってしまった。

 全体的に内容がない一冊だった。知らない女性の、聞きたくもない打ち明け話を聞いてしまった、という印象。
55点
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絲山秋子(中央公論新社)

 精神病院に入院中だった「花ちゃん」は、「なごやん」と一緒に病院を脱走した。二人は行くあてもなく、なごやんの車で逃避行を続ける。博多から大分、熊本と九州を南下する旅は、どこへ辿り着くのか……。

 花ちゃんが語る、薬の副作用が恐ろしい。「頭の中に暗い霧が来る」らしい。それにずっと聞こえるという幻聴も恐ろしい。精神的な疾患というのは本当に辛そうだ。
 だが、逃げ続ける二人は、少し楽しげでもある。ヒルに襲われたり、畑の野菜を盗み食いしたり、駐車中のポルシェに車をぶつけてしまったり。それらのハプニングが、一瞬病気のことを忘れさせてくれるせいだろうか。
 ラストも素直で良いラストだと思った。今後、二人の心が平穏でいられますように、と祈りたくなるような締めだった。
70点
伊藤たかみ(文藝春秋社)

 敦は三十歳の誕生日に妻と離婚しようとしていた。一緒に自販機のルート配送をしている水城にその事実を打ち明けると、彼女は自身の離婚に絡めていろいろな話をするのだった……。

 これが芥川賞受賞作? というのが第一印象。冴えた表現はところどころあるが、逆に言うとそれだけ、な作品。
 文章も「?」だが、主人公もまたいただけない。女々しくて勝手で、これでは妻の知恵子がかわいそうだ。敦なんかと出会わなければ良かったのに。
 しかし、敦もまた知恵子と違うタイプの女性と結婚していたなら、普通に幸せになれたような気もする。二人は決定的に相性が悪く、互いが互いをダメ人間にする運命にあるようだ。
 もう一編の『貝からみる風景』のほうがましだった。主人公はスーパーの掲示板を読むことを楽しみにしているという。私もあれを読むのが好きだ。「人間の価値を下げてしまいそう」だと考える主人公に同意はできないが。
50点
伊藤計劃(早川書房)

 近未来、人類は大暴動を経て「生府」が統治する新しい世界を創りあげた。病気はほぼ全滅し、人々は健康と安寧を手に入れた。そんななか、ある3人の少女が反旗を翻した。「私たちは死ななければならない。命が大事にされすぎているから」……。

 こういう世界観が好きな人にはたまらない小説なんだろうな、ということは想像がついた。htmlのようなタグのついた文。トァン、ミァハ、キアンという3人の名前。「自律状態」に「スタンドアロン」とルビをふる感覚。目指すところは何となく分かるが、私の好みではなかった。
 そんなこんなで、内容がどうとか主旨がどうとかいう以前に、嫌悪感が先だってしまってどうしようもなかった。
 こんな感想で本当に申し訳なく。
40点
糸井重里(東京糸井重里事務所)

 そのタイトルどおり、ネットでメールマガジンで投稿された「言いまつがい」を集めたのが本書。

 なんて面白い本なのだろう。内容ももちろんだが、装丁も面白い。表紙の紙はサイズが合ってなく、本のカドが一箇所だけ丸まっていて、活字も曲がっている。作り手の「悪ふざけ」っぷりに苦笑を誘われる。
 私のツボにはまりまくった作品をここに引用したいのはやまやまだが、それはルール違反なのだろう。なので、ぜひとも書店で本書を手に取り、25ページを読んでいただきたい。きっと笑いを堪えきれず、店員に不審の目で見られ、とどのつまり買わずにはいられなくなることでしょう。
90点
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