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よしなしごとども 書きつくるなり
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塚本邦雄(河出書房新社)

最初にあらすじを書くと決めているが、これは無理。
読了はしたものの、未だ頭の中がこんがらがっている。
言葉が私には難しすぎた……鰯の裂膾を肴に手酌でかれこれ小一時間、飾磨家の晩餐は終らうとしてゐるのに……この出だしだけで諦めるべきだった。
1974年に刊行されたそうだが、だったら旧仮名遣いではなく普通でよかったのでは? という疑問が消えなかった。

これから挑戦しようとしているかたにひとつアドバイス(クソバイス?)するなら、表題にある十二神将について説明されている箇所があるが、そこは流しても大丈夫。
これ、理解して覚えないとまずい? と思って栞をはさんでおいたが、ストーリー上さして重要ではない、はず。
もちろん理解していたほうが深く味わえるのであろうが面倒すぎた。

この作品の本題は流麗な言葉遊びを楽しむところにあるようだ。殺人事件の謎解きという側面もあるのだが、犯人が脇役くさくてちょっと興ざめだった。
思わせぶり、かつ最後まで謎のままな部分も多く、純粋にミステリーを楽しむ作品ではない。
30点

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津島佑子(講談社)

多喜子は21歳でシングルマザーとなる。両親には蔑まれ、誰にも祝福されない出産であった。しかし彼女はたくましく子育てをしていく。三沢ガーデンという植物を扱う店で働き始める多喜子。そこには障害児の父親であるという神林という男性がいた……。

多喜子の生まれが自分と近いためか、時代の空気感のようなものに、まず興味をそそられた。冷房などあまりない暑い夏、愛想の無い看護婦。昔はこうだったという感慨がわいた。

そして本題、多喜子の生き方は刹那的すぎてあまり共感できなかった。特に妻帯者である神林に好意を抱くくだり。ただ彼とゆっくり話をしたりしたいだけ、とたびたび思っていた彼女だったが、いざ二人きりになるチャンスが巡ってくると、それは簡単に抱いてほしいに変わっていた。結局性欲? と白けてしまった。
ジャズバーのバイト学生とも関係を結んだり、そもそも子どもの父親である男性ともあまり深く考えずにそうなった彼女である。

作品全体に「何か良からぬことが起きそう」な描写が散りばめられていて、読んでいて落ち着かなかった。赤ちゃんがいるのに多喜子もその周りの人々も奔放すぎたせいかもしれない。
90点

橘外男(中央書院)

 四つの短編と、一つの中篇。短編の中の一つ「蒲団」を紹介しよう。
 時は明治。古着屋の主人が、豪華な蒲団を格安で手に入れる。その途端、家業は傾き、尋常ならぬ女性の影がちらつき始める……。

 表現が直截で、かえって新鮮である。しかも文章はきわめて分かりやすいので、自ずと恐ろしい光景が迫ってくるようである。
 そのほか、「仁王門」では泣き「亡霊怪猫屋敷」では身震いした。
 老婆心ながら最後の「解題」を先に読まないほうが無難である。オチまで書いてあって、興味をそがれる。
80点
谷口英久(道出版)

 1円玉で何が買えるか、買えないか。著者が実験してみた見聞録。
 お米を1円分とか、箸袋を1円分とか、そのあたりのエピソードは面白く読むことができた。
 箸袋500個入りで250円。それを1円で2枚買う。領収書も書いてもらう。
 買ってどうする、という疑問はさておき、まぁ売る側もたいした損害(?)はなさそうなので、問題はないだろう。

 でも中には笑えない話もあった。たとえば「落語1円分」。筆者が知り合いの落語家に頼んで41秒間だけ落語を演じてもらったのだ。
 これは読んでいて腹が立った。してはいけないことだと思った。
55点
谷崎潤一郎(新潮社)

 七つの作品が収められているが、私が気に入ったのは「異端者の悲しみ」。
 大学生の章三郎は学校へも行かず、今で言う引きこもりのような状態であった。家は貧しく、妹は肺病を患い、気が塞ぐ毎日。章三郎は己の不運を嘆くのだった……。

 出だしの数ページからして、完璧な文章である。午睡を貪る主人公の夢うつつの世界。やがて覚醒した彼が感じる不条理感。その表現のうまさに圧倒された。
 当代切っての小説家に「谷崎を読むと小説を書く気が失せる」と言わせるだけのことはある。
 友人から借金をした挙句、踏み倒したり、末期の妹に心の中で悪態をついたり、主人公はかなり性格の悪い人間だが、あまりにも端正な文章ゆえか、さほど気にはならなかった。
 むしろそのおバカさんぶりには苦笑を誘われた。
85点
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