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よしなしごとども 書きつくるなり
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辻仁成(角川書店)

 美術絵画の修復士の順正。彼には忘れられない約束があった。八年前に別れた恋人あおいとの再会の約束。

 恋愛小説のサンプルのような小説である。男性には図抜けた才能があり、女性は儚げに美しく、そして舞台はフィレンツェ・ミラノ・東京。
 よくまあ臆面もなく、と思う。しかし、作者の筆力が題材の陳腐さを上回っているようだ。
 登場人物の誰にも感情移入できないし、展開も予想通り。それでも読後感が不快でないのは、あおいの愛され具合に多少は心惹かれるからか。
65点
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辻仁成(新潮社)

 刑務所の看守をする男。彼のもとに、昔手酷くいじめられた同級生が入所してくる。
 まず感じたのは、文章の緻密さ。トランプで作るタワーのように、一枚たりとも無駄な「カード」がない。

 主人公の一人称の文章なので、謎が多い。彼以外の登場人物の心中は想像するしかない。だが、その「不可解さ」こそが、この作品の主題なのかもしれないと思った。他人の心にある闇は、到底覗き見ることはできないのである。
80点
津島美知子(講談社)

 太宰治が自死するまでの十年間を妻として過ごした女性の随筆。
 非常に面白かった。太宰ファンには堪らない一冊である。

 まず、太宰が著した数々の作品に関するエピソードが大変興味深かった。『駆け込み訴え』は、炬燵にあたった太宰が「全文、蚕が糸を吐くように口述し、淀みもなく、言い直しもなかった」そうである。
 また、『人間失格』を執筆中には「『斜陽』の何倍もいいものだ」と、彼は気負って語ったという。
 この鳥肌の立つような逸話! 後に多くの人々を感動させる作品を生み出す現場を目の当たりにできた筆者に、嫉妬さえ覚えた。
 それから太宰の日常についての話も、愉快なものがたくさんあった。ノートに自分の顔を落書きしたり。高すぎる税金に狼狽し、「審査請求書」なるものを自分で書いたり。津軽で群がり咲くライラックの花を見せに「私」を畑まで連れ出したり。

 太宰を「矛盾のかたまりのような人」と評し、愛人と心中されてもなお、彼の言動を細部まで存分に表してくれた著者に感謝したい。
95点
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