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よしなしごとども 書きつくるなり
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谷崎潤一郎(新潮社)

 七つの作品が収められているが、私が気に入ったのは「異端者の悲しみ」。
 大学生の章三郎は学校へも行かず、今で言う引きこもりのような状態であった。家は貧しく、妹は肺病を患い、気が塞ぐ毎日。章三郎は己の不運を嘆くのだった……。

 出だしの数ページからして、完璧な文章である。午睡を貪る主人公の夢うつつの世界。やがて覚醒した彼が感じる不条理感。その表現のうまさに圧倒された。
 当代切っての小説家に「谷崎を読むと小説を書く気が失せる」と言わせるだけのことはある。
 友人から借金をした挙句、踏み倒したり、末期の妹に心の中で悪態をついたり、主人公はかなり性格の悪い人間だが、あまりにも端正な文章ゆえか、さほど気にはならなかった。
 むしろそのおバカさんぶりには苦笑を誘われた。
85点
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