柴田錬三郎(筑摩書房)
短編集。「盲目殺人事件」を紹介します。
大学を中退した国屋は根っからの不良。あるとき中年婦人・知子と知り合う。彼女の夫は盲目で性的不能者であった。
国屋は知子夫人とねんごろとなり夫の殺害計画を立てるが……。
初めてシバレンを読みました。歴史ものはまったく興味なしなので、ここまで出会うことがなかったのです。
でもさすがは大作家でございます。こんな短い小説でも読ませる読ませる。
夫の葬儀のシーンから始まり、時間が行きつ戻りつします。まー面白いったら。
そして国屋のような男が考えそうなことを見事に描き出しています。
夫人が憔悴している様子を「死んだような46歳の肢体を抱いた(略)やつれはてた顔を眺めている不快さに堪えられなくなって(略)」っておい。
ラストもよかったです。そのシーンが目の前に浮かび上がってくるようなラストでした。
90点
短編集。「盲目殺人事件」を紹介します。
大学を中退した国屋は根っからの不良。あるとき中年婦人・知子と知り合う。彼女の夫は盲目で性的不能者であった。
国屋は知子夫人とねんごろとなり夫の殺害計画を立てるが……。
初めてシバレンを読みました。歴史ものはまったく興味なしなので、ここまで出会うことがなかったのです。
でもさすがは大作家でございます。こんな短い小説でも読ませる読ませる。
夫の葬儀のシーンから始まり、時間が行きつ戻りつします。まー面白いったら。
そして国屋のような男が考えそうなことを見事に描き出しています。
夫人が憔悴している様子を「死んだような46歳の肢体を抱いた(略)やつれはてた顔を眺めている不快さに堪えられなくなって(略)」っておい。
ラストもよかったです。そのシーンが目の前に浮かび上がってくるようなラストでした。
90点
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読書の感想、これからは備忘録としてさらっと書きたいと思った61歳・冬。
考えをまとめるのがなかなかハードになってきちゃったわ、これも老化なのかしら。しくしく。
というわけで庄野順三・著「夕べの雲」(講談社文芸文庫)。
あーもうこういうの好き。好きすぎて、毎日ちびちび読みました。
大浦と細君(この呼び方もいい)、三人の子どもたちが丘の上の家に引っ越してくるところから物語が始まります。
吹きっさらしだから、風よけの木が要るよねってことであれこれ樹木を選んだり。
ムカデが出没して家族みんなが難儀したり。
梨の季節には長男の安雄くんが学校帰りに梨を買ってくるように母親に頼まれたり。
昭和な生活が生き生きと描かれていました。
特別なことは何も起きないけど、だからこそ退屈させずに読ませる筆力が半端ないっ。
考えをまとめるのがなかなかハードになってきちゃったわ、これも老化なのかしら。しくしく。
というわけで庄野順三・著「夕べの雲」(講談社文芸文庫)。
あーもうこういうの好き。好きすぎて、毎日ちびちび読みました。
大浦と細君(この呼び方もいい)、三人の子どもたちが丘の上の家に引っ越してくるところから物語が始まります。
吹きっさらしだから、風よけの木が要るよねってことであれこれ樹木を選んだり。
ムカデが出没して家族みんなが難儀したり。
梨の季節には長男の安雄くんが学校帰りに梨を買ってくるように母親に頼まれたり。
昭和な生活が生き生きと描かれていました。
特別なことは何も起きないけど、だからこそ退屈させずに読ませる筆力が半端ないっ。
下村敦史(集英社)
相場師として名をはせた父親の巨額の遺産。
それを喉から手が出るほど欲しい兄姉3人。
父親が失踪してもうすぐ死亡認定が出るというそのとき、父親のブログが突然更新される。
はたして父親は生きているのか?
初めて読んだ作家だったが、どんでん返しの部分は面白く読めた。
しかし人物の造形が雑。特にアンティークショップを経営する美智香がいただけない。
やっすいドラマに出てくるヒステリックな女性を、何の工夫もなく登場人物として描きました、といった感じ。
それからお手伝いの愛子の印象も揺れすぎだと思った。
トリックの都合上こういう描き方になったのであろうが、それにしても、である。
さくさく進むストーリーは読みやすくはあったが、読み終えたら残るものがあまりない作品だった。
55点
相場師として名をはせた父親の巨額の遺産。
それを喉から手が出るほど欲しい兄姉3人。
父親が失踪してもうすぐ死亡認定が出るというそのとき、父親のブログが突然更新される。
はたして父親は生きているのか?
初めて読んだ作家だったが、どんでん返しの部分は面白く読めた。
しかし人物の造形が雑。特にアンティークショップを経営する美智香がいただけない。
やっすいドラマに出てくるヒステリックな女性を、何の工夫もなく登場人物として描きました、といった感じ。
それからお手伝いの愛子の印象も揺れすぎだと思った。
トリックの都合上こういう描き方になったのであろうが、それにしても、である。
さくさく進むストーリーは読みやすくはあったが、読み終えたら残るものがあまりない作品だった。
55点
清水潔(新潮社)
隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件。
タイトル、サブタイトルですべて語っちゃってますね。
ノンフィクションなのですが、まさに事実は小説より奇なり、警察、検察の怠慢に驚きました。
ずさんなDNA鑑定でもって、無実の人を無期懲役にまで追い込んだ足利事件。
その事件を軸に、記者である清水氏は丁寧に取材を進めます。
そして真犯人に肉薄するも、警察は動かない。他の事件との絡みなど諸々あって動けない。
恐ろしいじゃないですか、今も犯人はパチンコ店で幼女を狙っているかもしれないのです。
栃木、群馬にお住まいで幼女がいるご家庭は、この本を読んだほうがいいですぜ。
本筋とは少し離れますが、免田事件の犯人とされ、のちに無罪となった免田氏と清水氏が、タクシーに乗ったときの描写が胸に刺さりました。
「本当は犯人でしょ、無罪になったけど」
と、タクシー運転手が本人とは知らずに免田氏に言うシーン。
これが冤罪事件の真の恐ろしさだと痛感させられました。
90点
隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件。
タイトル、サブタイトルですべて語っちゃってますね。
ノンフィクションなのですが、まさに事実は小説より奇なり、警察、検察の怠慢に驚きました。
ずさんなDNA鑑定でもって、無実の人を無期懲役にまで追い込んだ足利事件。
その事件を軸に、記者である清水氏は丁寧に取材を進めます。
そして真犯人に肉薄するも、警察は動かない。他の事件との絡みなど諸々あって動けない。
恐ろしいじゃないですか、今も犯人はパチンコ店で幼女を狙っているかもしれないのです。
栃木、群馬にお住まいで幼女がいるご家庭は、この本を読んだほうがいいですぜ。
本筋とは少し離れますが、免田事件の犯人とされ、のちに無罪となった免田氏と清水氏が、タクシーに乗ったときの描写が胸に刺さりました。
「本当は犯人でしょ、無罪になったけど」
と、タクシー運転手が本人とは知らずに免田氏に言うシーン。
これが冤罪事件の真の恐ろしさだと痛感させられました。
90点
柴田元幸(日本経済新聞出版社)
翻訳家である柴田氏のエッセイ。
東大卒で超有名翻訳家、となればどんな深い話が語られているのかと思いきや。
まあなんて軽くて面白い。
「そして誰もいなくなった」。
有名な蚊取り線香のキャッチフレーズ「緊張(!)の夏」から話ははじまる。かき氷大好き話になり、今どきは冷房の効いた店でかき氷を食すはめになって頭にくる、僕が王様なら弱冷房を推奨して、守れない人は死刑だ。
で、表題へといきつく。
このまま日本の人口が減り続ければ、やがて涼しい夏がやってくるかもしれない。
ひと気もなく荒涼とした日本。
柴田氏にはそこまでがんばって生き続けていただいて、感想を聞きたいものである。
80点
翻訳家である柴田氏のエッセイ。
東大卒で超有名翻訳家、となればどんな深い話が語られているのかと思いきや。
まあなんて軽くて面白い。
「そして誰もいなくなった」。
有名な蚊取り線香のキャッチフレーズ「緊張(!)の夏」から話ははじまる。かき氷大好き話になり、今どきは冷房の効いた店でかき氷を食すはめになって頭にくる、僕が王様なら弱冷房を推奨して、守れない人は死刑だ。
で、表題へといきつく。
このまま日本の人口が減り続ければ、やがて涼しい夏がやってくるかもしれない。
ひと気もなく荒涼とした日本。
柴田氏にはそこまでがんばって生き続けていただいて、感想を聞きたいものである。
80点