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よしなしごとども 書きつくるなり
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桜庭一樹(角川書店)

 中学1年の山田なぎさ。彼女のクラスに転校生がやってくる。名前は海野藻屑。美少女で嘘つきで「自分は人魚だ」と言い張る彼女は、なぎさに近付いてくる……。

 母親のパート収入と生活保護で暮らすなぎさの家は、恵まれているとは言えない。いっぽう父親に虐待されているらしい藻屑も、あやうい毎日を過ごしている。二人に共通しているのは、幼すぎて自分の境遇を変えられないという点だ。そう、中学生には何も出来ない。その絶望感が小説全体に暗い影を落としている。読んでいて息が詰まるような、暗い影。
 やがて物語は信じられないような悲劇へと突き進んでゆく。もう終わっていること(冒頭で藻屑は遺体となって発見されている)なのに、彼女の「生」を願わずにはいられなかった。
 本当に藻屑のように軽んじられた彼女の命。現実の世界でも親の虐待によって死んでゆく命がある。どんな可能性を秘めているか分からない子どもを殺すということは、世界の未来の一部を殺しているということを親は自覚すべきであろう。
90点
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