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よしなしごとども 書きつくるなり
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佐藤雅彦(中央公論新社)

 毎日新聞夕刊紙上で、月に一度掲載された「毎月新聞」という名のコラムを集めた一冊。
 単行本で出たときから気になっていて、今回文庫化されたので早速買ってみた。単純に笑える軽い話から、ちょいと固めの話まで、いずれも興味深く読んだ。

 特に面白かった話は『新しい心配』。
 筆者がウィーン・フィルのコンサートに行ったときのこと、急に心配になったことがあった。それは「誰かの携帯が鳴ったらどうしよう」ということ。その心配はどんどん膨らんでいったが、ふと見た劇場の案内には『電波を遮断しています』の文字が。ほっとしたのもつかの間……
 結末は本編をご覧頂くとして。筆者はかつて無かったこんな心配事を「新しい心配」と名付けたのだ。
 考えさせられる話だった。こういう新しいストレスに、現代人はじわじわと苛まれているのである。
75点
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佐藤和歌子(リトル・モア)

 不動産広告に載っているような部屋の間取り図を、そのまま載せたのがこの本である。
 不思議な間取りがたくさんあって、興味深かった。
 玄関をいったん出ないとシャワールームに行けない部屋。部屋の中央に、島のようにバス・トイレがある部屋。洋室6帖+バス・トイレ+ベランダ50帖の部屋。
 と、首を傾げたくなる部屋満載である。
 ただ凡例のようなものがないので、意味の分からない記号があったりして、その点がちょっと不親切だと思った。
60点
佐野洋子(新潮社)

 いつもはつらつとして、どこへ行くにもきちんと化粧をする母・シズコ。幼いころ、つなごうとした手を振り払われてから、私・洋子は母を嫌悪するようになった……。

 現実的で社交的でくじけない母。そんな母親を好きになれない娘は、ずっとずっと自分を責めた。母が認知症になって初めて謝罪することが出来た。
 彼女の感情はいわゆる同族嫌悪なのだろうか。同じくらいの強さ、冷たさが二人の根底には流れている。相手のなかに、自分の嫌な部分を見ている。これでは歩み寄れまい、と思った。
 私と実母は性格が正反対でお互いを理解できない親子だ。だが、たぶん互いに諦観することで、少し歩み寄ることができた。私たちは、シズコさんと洋子さんよりはマシなのかもしれない。
80点
沢木耕太郎(新潮社)

 デリーからロンドンへ向かう放浪の旅。そのトルコ・ギリシャ・地中海編。
 まずトルコ。案内役をかって出てくれた若者の話が良い。
 見知らぬ外国人に親切にしてくれる彼。筆者がお礼をしたいというと、彼は「マネー」と返事をする。「なんだ、やっぱり金か」と筆者は落胆するが、彼が求めたのは、日本の硬貨だった。記念に、ただ一つだけ、コインを……。若者の心根の美しさに、私も感動した。
 次にギリシャ。ジプシーと呼ばれる人たちの現実を初めて知った。野卑だが生命力に溢れた彼ら。留まることなくことなく流れてゆく彼らの生活は、いきおい刹那的にならざるを得ないのだろう。
 最後は地中海の海上からの手紙。風景の描写が素晴らしい。「海も空も陸さえも青い……しかもその青がそれぞれ異なる輝きを持っている……山々は淡く透きとおるようなブルーだった」。この目で見ずにはいられない気持ちになった。

 紹介したい部分は尽きない。こんなに夢中になれる旅行記は小田実の「何でも見てやろう」以来であった。いつかギリシャに行きたいと思っていた私だが、トルコもぜひとも行ってみたい国になった。
90点
沢木耕太郎(新潮社)

 筆者曰く「コラムでもなく、エッセイでもなく、ノンフィクションの作品とも異なる」作品だそう。
 ひとことで言うなら、さらりとおもしろかった。特に「鉄塔を登る男」。東京タワーのてっぺんで点滅している灯、それが切れたら誰が取り換えるのか?ヘリを飛ばして、マジックハンドをにゅ~っと伸ばして……嘘です。答はこの本の中にあります。
60点
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