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よしなしごとども 書きつくるなり
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小泉八雲(新潮社)

 短編集。たくさんの短編が収められている。
 幼い頃に読んだり聞いたりした、いわゆる怪談話は、ほとんどこの本に収められていた。
 有名な『耳なし芳一のはなし』を始めとして、茶碗の中に誰かの顔が見えるという『茶碗の中』、斬首刑にされる罪人の意趣そらしをする『かけひき』など、今読んでも面白い話ばかりである。

 小泉八雲は本名ラフカディオ・ハーン、言うまでもないことだが生粋の日本人ではない。本文中、体重はポンド、距離はヤードで記されているところが、いかにもそれを感じさせた。
80点
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小泉吉宏(幻冬舎)

 全五十四帖の源氏物語。一帖を見開き二頁の漫画にしたのが本書。
 漫画の書評を載せることに迷いがあったが「文芸」のベストセラーリストに載っていたので良しとしよう。
 とにかく分かりやすく、が作品のコンセプトだと思うが、それでも誰が誰やら訳がわからなくなってくる。

 しかしながら、この時代の色恋沙汰は、なんて面倒な駆け引きだらけだったことか。
 思いを寄せる女性にはいちいち歌を詠み、しかもセンスのあるものでないと鼻で笑われてしまうのである。
 加えて、身分と立場をわきまえなくてはいけないし、短命だし、常に「出家すること」が頭の片隅にあるし。
 ああ、まろ、大変そう……でも栗顔のまろは恋愛の苦悩さえ楽しんでるように見えてしまうから不思議である。
75点
幸田文(新潮社)

 1月から5月までの100日間、毎日書き続けた随筆。

 何気ない日々を、肩肘張らない筆致で書いていて、寝る前にちょこちょこ読むのにちょうど良い具合の本であった。
 筆者の、言葉がとにかく優しいのである。
 風呂の湯加減はなかなか難しい……「ちゃらっぽこな気持ちややりかた」で失敗しているわけではないのに。
 がさがさの老婆の手……「美しいに越したことはないが、なあに、すっきりしていれば鬼の手は上々だ」。
 2月末、ずいぶん春に近付いた……「遠い汽車の笛などもぷおうと曳くように聞こえる」。
 こういう人と暮らしてみたいな、そうだ、母親だったらいいだろうな、と思わせる随筆であった。
80点
幸田露伴(岩波書店)

 「木理(もくめ)美しき槻胴(けやきどう)、縁にはわざと赤樫を用ひたる岩畳作りの長火鉢に対(むか)ひて……」
 出だしの一文で、これは読了できそうにない……と私が思ったのも道理ではありますまいか。でも、こういう文章もじっくり読み進むと慣れてきて、ああ美しき哉日本語、と恍惚としてくる。

 粗筋は次の通り。新たに建立されることになった五重塔。一流の大工、源太がその仕事を請け負う事でほぼ決まっていたところに、彼の弟子であるのっそり十兵衛が「自分がやる」と言い出す。腕は良いが「空気」を読めない十兵衛、人格者である源太。二人の対比が際立つ。
 そして建立中に起きる暴風雨。風にしなって、今にも崩壊しそうな五重塔……そんなスリリングな部分もまた楽しめた。
80点
鴻巣友季子(ポプラ社)

 「翻訳とは何ぞや?」という問いに、小説『嵐が丘』の翻訳仕事などを通して応えるエッセイ。
 原文と格闘する筆者の必死さがひしひしと伝わってきた。「wine」という一語を、ぶどう酒とするか、ワインとするか、はたまた酒でいくか、筆者は考えに考える。
 よっぽど変な訳でない限り、きっと読者は気付かないだろう。しかし少し変な訳の場合、違和感が残りそうな気もする。そのかすかな違和感を埋めるべく、翻訳者というものは懸命になるのであろう。

 第二部は、柴田元幸氏との翻訳対談。筆者には申し訳ないが、第一部のエッセイよりこちらのほうが面白かった。興味のない話はちゃんと訳したくもないので、そこは他人にみてもらうという柴田氏。あまりに潔くて笑ってしまった。
55点
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