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臍の緒は妙薬

河野多惠子(新潮社)

 四つの短編が収められているが、表題作の『臍の緒は妙薬』が良かった。
 峰子はある小説に「臍の緒は大病にかかった当人に煎じて服ませれば助かる」と書かれているのを読み、以来臍の緒のことが気になってならない。自分の臍の緒の包みが開けられていたのは、その謂われと関係があるのだろうか?

 話の展開がとても自然で、まるでエッセイのような筆致である。
 実在の店名が書かれ、ぽんぽんと軽妙な会話。たいした事件は起きないのだが、その文章には読者を惹きつけて止まない独特のリズムがある。他の三編もしかり。
 「小説は作り話なので読まない」とのたまう学者がいたが、ぐだぐだのノンフィクションを読むなら、洗練されたフィクションのほうが良いという好例がここにある。
80点
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赤い脣、黒い髪

河野多恵子(新潮社)

 短編集。タイトルにもなっている『赤い脣』。親戚数人と紅葉狩りにでかけた「私」。孫娘の赤い脣(くち)と紅葉の赤が彼女のなかで交錯して、言い知れぬ不安感に襲われる。

 何かと捨て石の多い文章だと思った。主題から逸れているような描写の数々に、回り道をさせられているような気分になるのだが、読了すると無駄な部分などなかったことに気付く。
 他には『大統領の死』。正常と異常の狭間で揺れ動く主人公の、その振り幅の取り方がうまい。
70点

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