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よしなしごとども 書きつくるなり
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米原万里(徳間書店)

 日露同時通訳者である筆者のエッセイ。
 通訳ってすごいなぁと常々思っていたが、すごい上に大変でもあるらしい。ある時は原子力の会議、そしてまたある時はボリショイバレエのプリマのインタビュー、そうかと思えば「旧石器時代のなんたらかんたら」のシンポジウム、と実に多種多様な専門用語を駆使しなければならないのだから。
 誤訳のエピソード、名訳の紹介、各国の慣用句など、興味深い話がいっぱいで飽きさせない。
70点
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川上弘美(平凡社)

 雑誌に連載した日記をまとめた作品。
 川上サン、相変わらずである。相変わらず楽しげに、ほよよーんと生活されているようである。
 その力の抜けっぷりがあまりに可愛らしくて、何だか小憎らしくなってくる。自分だけ楽しんでてずるい、と思えてくる。

 そして、自分と川上氏の共通点をまたみつけてうきうきする。川上氏も花粉症らしい。目のかゆさに関する記述がまた素晴らしい。
 目玉の表面に小人が何百人と並んで行進してゆくようなかゆさ、しかも小人たちの靴の底はちょっと毛羽立ったフェルト……微妙にかゆい感覚をこんなふうに表現できるなんて、やっぱりずるい。
100点
藤田宜永(文藝春秋社)

 仕立て屋の主人、淳蔵。彼は昔、友人昌平の妻だった美保子に思いを寄せるも、彼女に裏切られる。
 二十数年ぶりに昌平が淳蔵を訪ねてやってくる。美保子は重い病に侵されているという。

 なんて平凡な、特徴のない文章であろうか。だが、引っ掛かりが無い分じわじわと心に染み入って、読了したときには上質な作品に触れたときに感じる心地よさに包まれた。
 ストーリーの中に数々の花が登場する。桜・レンギョウ・ヒトリシズカ……移ろいゆく花たちが彩りを添えている。
80点
小川洋子(文藝春秋社)

 寡黙な少年は、回送バスに住む「マスター」と出会い、チェスの手ほどきを受ける。少年はチェスに魅入られ、その奥義に触れ、それからの人生をチェスとともに歩む。
 いろいろな出会い、別れ。どれだけ時が経とうとも、少年の身体は少年のままで、心はチェスの宇宙を旅していた……。

 チェスの指し方も知らない私だが、それでもこの物語の世界にどっぷり漬かることができた。少年の天才的な才能に胸を躍らせ、「大きくなること=悲劇」と思う少年の心情に胸を痛めた。
 個性的な脇役たちが、またいい。優しくて、身体も心も大きなマスター。伸びやかに、颯爽とチェスを指す老婆令嬢。細く白く透き通る手を持つミイラ。それぞれが少年のことをいとおしく思っていて、その温かい思いが全編を満たしている。
 少年の唇に毛が生えているという設定と、悲劇的なラストはどうにも受け容れ難かったが、それ以外は文句なしの素晴らしい一冊であった。
85点
藤野千夜(講談社)

 高校生のトシヒコはホモで、同級生のリョウに密かに好意を寄せている。一方ヤマダもホモで、彼はホルモン注射を打ち、学校にもスカートをはいて来たりする。

 私は同性愛には全く興味がないのだが、そういう嗜好を排斥する気はない。ただ、ヤマダよりはトシヒコのほうが好ましいとは思う。
 もう一編の『午後の時間割』のほうがリアリティがあった。が、主人公が気持ちだけ六十四歳になるという設定が企画倒れで、活かされてない。
60点
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