吉田修一(朝日新聞出版)
土木作業員の祐一は、出会い系サイトで佳乃という女性と知り合う。無口で小心な祐一に、佳乃は次第に嫌気がさす。あるとき待ち合わせ場所に、たまたま佳乃の知り合いの男性が居合わせ、彼女は祐一の目の前で彼の車に乗って走り去る。怒り心頭の祐一は、二人のあとを追い掛けるが……。
頻繁に場面が切り替わり、それが物語に疾走感を与えていて、ページを繰る手を止めることができなかった。
また、登場人物は皆リアリティがあって、特に佳乃の父親など既視感さえ覚えた。彼の悲しみは他人事とは思えず、もらい泣きしてしまった。
それから物語の後半で祐一と出会う光代の存在感も大きかった。陳腐な言い方になってしまうが、優しさは時として罪深いものだ。
本当の、本物の「悪人」は、この作品にはいない。ただ、普通の人間が、ちょっとしたきっかけやタイミングの悪さで悪事に手を染めてしまうことを、淡々と示唆しているのがこの作品なのだ。
90点
土木作業員の祐一は、出会い系サイトで佳乃という女性と知り合う。無口で小心な祐一に、佳乃は次第に嫌気がさす。あるとき待ち合わせ場所に、たまたま佳乃の知り合いの男性が居合わせ、彼女は祐一の目の前で彼の車に乗って走り去る。怒り心頭の祐一は、二人のあとを追い掛けるが……。
頻繁に場面が切り替わり、それが物語に疾走感を与えていて、ページを繰る手を止めることができなかった。
また、登場人物は皆リアリティがあって、特に佳乃の父親など既視感さえ覚えた。彼の悲しみは他人事とは思えず、もらい泣きしてしまった。
それから物語の後半で祐一と出会う光代の存在感も大きかった。陳腐な言い方になってしまうが、優しさは時として罪深いものだ。
本当の、本物の「悪人」は、この作品にはいない。ただ、普通の人間が、ちょっとしたきっかけやタイミングの悪さで悪事に手を染めてしまうことを、淡々と示唆しているのがこの作品なのだ。
90点
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