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冷たい密室と博士たち

森博嗣(講談社)

 ある大学の研究施設で、殺人事件が起きる。現場は完全な密室。偶然現場に居合わせた犀川助教授と大学生の萌絵。彼女が事件の謎を解こうと必死になるのを、犀川は苦々しく思っていた。やがて次の事件が起こり、萌絵は生命の危機に晒されるが……。

 「すべてがFになる」を読んだときはかなり面食らったが、こちらの第二作のほうは、多少読み易くなったような気がした。登場人物たちの特異なキャラクターに慣れただけかもしれないが。
 密室の謎については(たぶん)完璧な説明がなされていたが、私のように理解できずとも悲観することはない、と思う。所詮、作家が都合のいいように作った世界なのだから(負け惜しみ)。
75点
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ストレンジ・デイズ

村上龍(講談社)

 落ちぶれた音楽プロデューサーの男が主人公。ふとしたことで、天才的な演技力を持つトラックドライバーのジュンコと出逢う。彼は彼女の映画が撮りたいと、痛切に願うようになる。

 面白くないとは言わないが、人に勧められるような本ではない、作者の毒気に当てられるというか、それにとても読みにくい、こんなふうに句読点がヘンだし、誰かのセリフが長々といつ果てるとも知れないように続くし。
 と、まねして書いてみたが、こういう文体って書く側は楽だ、ということに気付いた。
 筆者はどうやら、美人、金持ち、権力者、あるいはセンスの良い人間しか認めていないようだ。いちいち「……ベンチに座ってホカ弁を食べるようなブスOL」なんて表現する必要はないと思うのだが。他にたとえようはないのか。
45点

すべてがFになる

森博嗣(講談社)

 単純に、ただ面白かった、では済まされない作品らしい。いろんな趣味嗜好の人々の琴線に、あるいは逆鱗に触れてしまう作品のようだ。
 「ガンダム系」という表現が出てくる。それから、頭脳明晰、美人でしかもお嬢様の萌絵。そして、タイトル、本文中に散りばめられたコンピュータ用語。
 「鼻につく」という方もいるだろう。「好き。ハマる」という方もいるだろう。私はどちらでもないが、ひとこと言うなら「よくできてるな」であった。
75点

名文を書かない文章講座

村田喜代子(朝日新聞出版)

 文章を書くのは難しい。自分の書いたものは、どこかヘンな気がする、具体的に説明できないけれど、どこかが。そんな私のための、貴方のための一冊。
 「あ! そういうことか!」と思わず膝を打つようなことがたくさん書かれていた。

 まず『そろーりと始めよう』。エッセイの書き出しで、いきなり情報過多にしないこと。
 「昨年の五月十五日、十坪ほどの家の庭で、隣の佐藤さんから譲り受けた深紅のバラが三十輪も一斉に咲いた。」
 これは良くない。読者がついていけなくなる。

 それから、女性の文章に多いという「~とのこと」。
 「娘に給食の献立をきくと、カレーが出たとのことだった。」
 読んでいていかにも舌足らずな感じがする。言葉をはしょらずに書くと
 「娘に給食の献立をきくと、カレーが出たと教えてくれた。」
 となる。
 文章が明確になり、座りがよくなった。
 こんなふうにちょっとしたことだけれど大事なことが、この本には詰まっている。
80点

抱きしめる、東京~町とわたし

森まゆみ(講談社)

 1954年に生まれた筆者が、移ろい行く「東京」を、自分の生活に絡めて描いたエッセイ。
 私より少し上の世代だが、幼い日に見たこと、したことは結構共通することがある。紙製の着せ替え人形、コンクリート製のごみ箱……ノスタルジイを感じる。
 ただ附属高、早大(東大は二次で落ちた)と進んでいくあたりは、自分の賢さをひけらかさないように、そーっと書いている感じがした。
 「なんだ、苦労知らずのお嬢様かい」って思われたくないのか……なんて邪推かしら。
55点

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