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ナイフ

重松清(新潮社)

 視点は違えど、すべて「いじめ」がテーマの短編集。
 表題作の「ナイフ」。息子がいじめられていることに気付き、苦悩する父親。彼が回想するシーンで、新生児室にいる息子に「生きることに絶望するような悲しみに出会いませんように」と願う部分がある。皮肉なものである。

 この作品を読みながら、ずっと考えていた。自分の子供がいじめにあったら、ということを。でも想像することさえ厭だった。学校なんか行かなくていい! って言うと思う。なぜならこの作品に出てくるようないじめっ子はタチ悪すぎで、根底から病んでいるから。
 気に入らなかったのは「エビスくん」。悪ガキがほとけ心を起こすあたりが嘘くさかった。現実はこうはいかないだろう。
70点
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四十回のまばたき

重松清(幻冬舎)

 文体が村上春樹にそっくり。これが彼の作品だと言われても、全然疑わないと思う。主人公は十八回くらい(数えないでね、冗談だから)ため息をついてるし、登場人物は変なあだ名で呼ばれてるし、濡れ場はあくまであっさりと、だし。

 内容は、次の通り。妻に先立たれた翻訳家である主人公は、妻の妹と同居することになる。その義妹は冬眠するという奇病持ちで、しかも妊娠していた……。
 話自体はおもしろかったが、村上氏の作品との差異を見つけようとしてしまって、どうにも感情移入できなかった。解説によると、この作品だけ毛色が違うそうなので、この作者の他の作品を読まずに結論を出すのは早いのかもしれない。
60点

犯罪小説家

雫井脩介(双葉社)

 「日本クライム文学賞」を取った待居。その受賞作は映画化されることとなった。監督は鬼才と称される、脚本家・小野川。彼は独自の感性で、一時期有名になった自殺サイトの話を映画に盛り込もうとする。待居はそんな彼を不快に思うが……。

 誰が主人公というわけでもなく話が進んでいくので、全体的に冗長な感じを受けた。特に小野川はアクが強くて強引な性格なので、彼が出てくると余計話がくどくなる。
 と、前・中盤はいまいちだったが、終盤の畳み掛けるような展開はスリリングで良かった。雫井氏の本領は終盤で発揮される……彼の作品を三冊読んで確信した。
70点

犯人に告ぐ

雫井脩介(双葉社)

 幼い男の子を狙った連続殺人事件が起きる。警察の捜査は行き詰まり、ついにテレビ局を巻き込んだ、史上初の劇場型捜査が動き出す。

 警察小説というと、登場人物が把握しづらいのが常だが、これは違う。利己的な植草。人情家の津田。実直で頼れる本田。それぞれが確固たるキャラクターを持っているので、自然と頭に入ってくる。
 ストーリーも実に分かりやすく、大きなどんでん返しなどは無いものの、すいすい読めて気持ちが良かった。
 スピード感あふれる終盤の展開もすばらしく、まさにページを繰る手ももどかしいほどだった。

 難点を挙げるならば、話し言葉の頭に、よく「えー、」と付いているのが引っ掛かった。リアルさを出すためかもしれないが、鬱陶しいだけである。
95点

火の粉

雫井脩介(幻冬舎)

 殺人事件の裁判で、裁判官の梶間は、被告人である武内に無罪を言い渡した。
 二年後、退官した梶間は大学教授となっていたが、彼の家の隣に武内が越して来た。紳士然とした武内に、梶間の家族も好意を持つ。しかしいろいろな事件が武内を巡って起こりはじめ、不穏な空気が漂いだす。

 久々に手に汗握るサスペンスを読んだ。武内という男の謎が謎のまま終盤までなだれ込むので、緊張感を持ったまま、読み進むことができた。
 無駄な描写……電球の交換で苛立つシーンなど……も多少あるが、複雑な構成ではないのでテンポは良い。
 ラストもそつがなく、単なる勧善懲悪になっていないところがまた素晴らしい。
95点

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