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よしなしごとども 書きつくるなり
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パウロ・コエーリョ(角川書店)

 老いへの不安、自分の無力さに対する絶望感などから、ベロニカは自殺を図る。
 が、それは失敗に終わり、彼女は精神病院に入院させられる。そこで彼女はいろいろな入院患者と出会い、生きることの意味を自らに問い直すのだった……。

 暗い精神世界に引きずり込まれそうな作品である。
 「狂うってどういうことなの?」と問い掛けてくるベロニカ。映画館で、仕事場で、パニックの症状に襲われる弁護士のマリー。両親の過大な期待に応えられず、多重人格者となったエドアード。彼らの恐怖感や焦燥感が、じわじわとこちらにも伝わってきて、息苦しくなった。
 とりわけ、ベロニカがある方法によって性的な開放感を得る部分は、息苦しさを通り越して、薄気味悪かった。
 精神的に疲れているときには読まないほうがいい作品かもしれない。
60点
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カール・ハイアセン(理論社)

 中学生のロイは、あるとき裸足で歩道を走る少年を見掛ける。少年は町外れにオープン予定の、有名なパンケーキハウスの建設計画を阻止するべく奔走していたのだった。

 作者のハイアセンはミステリ作家だそうだが、このヤングアダルト向けの作品もハラハラドキドキが随所に散りばめられていて、その辺はお手の物なのだろう。
 大人が子供にきりきり舞いさせられるという設定はありがちだが、それでも大人たちの間抜けぶりには笑えた。
 子供どうしのいざこざも、本当に子供の目線で描かれていて、ロイの緊張やとまどいがよく伝わってきた。
75点
ヴィカス・スワラップ(講談社)

 スラム街に暮らすラム・ムハンマド・トーマス。彼はクイズ番組に出演し、12の問題を次々にクリアし、賞金1億ルピーを手にする。が、何らかの不正を働いたとして逮捕されてしまう。教養の無い彼がなぜ問題の正解を知っていたのか……?

 言わずと知れた、アカデミー賞受賞映画「スラムドッグ ミリオネア」の原作。さすがに面白かった。
 ひとつひとつの問題に、18歳のラムが見てきた人生のすべてがあったのだ。幼児虐待、殺人、強盗、賄賂、恐喝、少女売春。
 現在のインドがこの小説にあるような国だとしたら非常に憂うべき問題……なんて悠長なことを言ってる場合ではない、一刻も早く誰か何とかしてあげて! と切に思った。せめて簡単に命を落とす子ども達だけでも。
 だが、同時に子どもの持つパワーというか、したたかさにも感じ入った。時に大人を翻弄しながら、とにかく「今日」を生き延びる。その強さはやがてインドという国を変える力になるかもしれない。なって欲しい。
95点
エマニュエル・ボーヴ(白水社)

 傷痍軍人の「ぼく」は、年金をもらって細々と暮らしている。孤独で寂しい彼は、街へ出ては友人になってくれそうな人を探す。が、彼の期待はいつも裏切られる……。

 主人公が友達になれなかった五人の人物が登場する。その五人というのが実はマトモで、オカシイのは主人公のほうなのである。
 まず、友達が自分より幸福なのが許せない。そう、明確に彼は「許せない。」と思うのである。醜い嫉妬心を恥じるどころか、そういう相手とは「絶対理解し合えない」とまで思っている。
 また、親切にしてくれた人にも、恩をあだで返すような真似を平気でする。
 とにかく身勝手で腹黒い「ぼく」。だが、彼があまりにも幼稚ですっとこどっこいなので、怒る気力さえ削がれてしまう。
 彼はいつか自分の愚かさに気付くのだろうか。気付かなそうだな、まぁ勝手にいつまでも悩んでろ、と読了後思わず苦笑してしまった。
90点
リディア・デイヴィス(白水社)

 全51編からなる、短編・散文集。
 訳者が岸本佐知子氏だったし、彼女が「運命の本と出会ってしまった!」と激賞していたので期待して読んだが、見事にハズレだった。

 ほとんどのものは意味不明。唐突に物語、いや妄想は始まって、オチもなく終わる。訳者はそんな作品群に「鬼気迫る」ものを感じたり、「焦燥感を浮かび上がらせている」と思ったりしたようだが、そう言われて読み返してもなお「どこが?」という感想しか持てなかった。
 奇をてらえばいいってものでもないと思うのだが……いや、私ごときには理解できない深淵が隠されているのか? とにかく、謎だらけの作品集であった。
15点
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