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よしなしごとども 書きつくるなり
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アイザック・アシモフ(東京創元社)

 月に一度、晩餐会を開いて他愛のない話をする会、それが「黒後家蜘蛛の会」であった。個性豊かな六人のメンバーたちは、かわるがわるホスト役となり、皆にいろいろな謎解きをさせた……。

 1~5まであるこのシリーズ、「1」には12回分の会の様子が収められている。初回の『会心の笑い』を紹介したいと思う。
 強欲なアンダースンと潔癖なジャクスンは仕事上のパートナーだった。が、やがてアンダースンはジャクスンを陥れるようにして会社を追い出した。
 数日後、アンダースンは自宅から「何か」が無くなっているような気がし始めた。雑然とした自宅ゆえ「何か」の正体は分からないが、盗んだのはジャクスンに違いないと思うのだった。
 トリックは所謂よくある手だが、登場人物たちのセリフが洒落ているといったらない。特に給仕のヘンリーは、毎回胸のすくようなセリフを最後に言う。天啓に打たれたように唖然とするメンバーの顔が思い浮かぶようであった。
75点
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パトリック・ジュースキント(文藝春秋社)

 時は18世紀。フランスはパリに、天才的な嗅覚を持つグルヌイユという男がいた。
 彼はやがて香水調合師となりその才能を遺憾なく発揮し始める。彼が作った香水は絶賛を浴びるも、それで満足するような彼ではなかった。もっと良い香りがこの世にはある……彼の欲望はとどまるところを知らなかった。

 匂いが主役の話? と、あまり期待せずに読み始めたのだが、読むにつれ面白さは膨れあがり、後半はものの見事に一気読みさせられた。
 見せ場はたくさんあるのだが、特にグルヌイユが初めて香水を調合するシーンが圧巻だった。
 その香りを香水屋の主人はこう表現する。「典雅でキレがいい。ほんのりしていて、それでいてわくわくするほど斬新だ。(略)……ゆたかな、沈み込ませるような、濃褐色の深み」。まさに香り立つような一文である。

 「匂い」の記憶というものは、何かを「見た」記憶より生々しく心に残るものかもしれない。至高の香りを追い求めたグルヌイユの生涯というものもまた、私の記憶に残りそうである。
85点
アン・タイラー(文藝春秋社)

 母親と長男、次男、長女の、ほぼ一生の話。夫に逃げられた母親は、一人で子供たちを育てていく。わがままで、潔癖症の母。見た目は良いが、ずる賢い長男。どん臭く、冴えない次男。存在感の薄い長女。

 各章ごとに語り手が変わっていくのだが、ったく、どいつもこいつも、である。中でも長男は、一番嫌いなタイプ。サザエさんちのカツオを、かなり悪くしたような性格。
 しかしながら、自分も「子供」と「母親」という両方の立場に立ってみて初めて、この本にあるような、お互いの理解不能ぶりに気付き、愕然とした。
 母親は良かれと思って口出しする、子供は母親にだけは口出しされたくない……この気付きを、忘れずにいよう。
75点
ジュリー・ガーウッド(二見書房)

 「俺を祝福しろ、俺はこれから罪を犯す」。懺悔室で神父がきいた告白は、彼の妹の殺人予告だった。
 妹が、彼女の護衛を務めるFBI捜査官と恋に落ち、それが話を長くしている。無駄な描写、無駄なセリフが多すぎる。
 犯人が表舞台に立ち、いよいよ殺人を実行しようとするシーンでは、一瞬固唾を呑んだが、情景が分かりづらいところがかなりあった。
 「なぜ誰も気付かないのか?」「なぜこうも易々と犯人の思い通りに事が運ぶのか?」
 そんな疑問で頭がいっぱいになった。
40点
サマセット・モーム(筑摩書房)

 雑誌に掲載された左右見開き二ページ分のショート・ショート集。
 特に面白かった二編を紹介しよう。
 『家探し』。ルースと付き合っていたロジャーは、あるとき不意に彼女のことが好きでなくなる。だが彼は変わらぬ愛情を示し、結婚を前提とした家探しに奔走する。完全無欠の家を探し続ける彼に対して、ルースが下した結論とは。
 ロジャーの忍耐強さに驚いた。げに難しきは、ヤバい女性との別れかたである。

 『ランチ』。貧乏作家である「私」は、ふとしたきっかけで知り合った女性とランチをとることになる。場所は高級レストラン。
 贅沢なものばかり注文する彼女に、金欠の「私」はハラハラするが……。
 レストランでの会話は、まるでコントのよう。飲み物は要らないといいつつ、シャンパンなら飲めるという彼女。
 一事が万事そんな調子の彼女、20年後にどうなったかというと? オチも洒落ている一編だった。
75点
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