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香水 ある人殺しの物語

パトリック・ジュースキント(文藝春秋社)

 時は18世紀。フランスはパリに、天才的な嗅覚を持つグルヌイユという男がいた。
 彼はやがて香水調合師となりその才能を遺憾なく発揮し始める。彼が作った香水は絶賛を浴びるも、それで満足するような彼ではなかった。もっと良い香りがこの世にはある……彼の欲望はとどまるところを知らなかった。

 匂いが主役の話? と、あまり期待せずに読み始めたのだが、読むにつれ面白さは膨れあがり、後半はものの見事に一気読みさせられた。
 見せ場はたくさんあるのだが、特にグルヌイユが初めて香水を調合するシーンが圧巻だった。
 その香りを香水屋の主人はこう表現する。「典雅でキレがいい。ほんのりしていて、それでいてわくわくするほど斬新だ。(略)……ゆたかな、沈み込ませるような、濃褐色の深み」。まさに香り立つような一文である。

 「匂い」の記憶というものは、何かを「見た」記憶より生々しく心に残るものかもしれない。至高の香りを追い求めたグルヌイユの生涯というものもまた、私の記憶に残りそうである。
85点
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