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女のいない男たち

村上春樹(文藝春秋)

 短編が6本、収められているが、どれもこれも面白かった。
 そしてどれもこれも「その先を教えて」というところで終わっている。それが物足りなくもあり、想像をかき立てられるところでもあり。

 特にそう思ったのが『木野』。
 バーのマスターである木野。ある夜、柄の悪い客がやってきて、それを常連客である男が追い払ってくれたのだが……。
 木野はそのあとどうなったのさ!? とページの余白をながめて(ハルキふうに言うと)「やれやれ」とつぶやいた私だった。ふっ。

 唐突に「その女と寝た」的なフレーズも何度か出てきたし、傍点も多用されているし、ハルキをハルキにしているのはハルキだな、なんてことも改めて思った。
85点

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ギンイロノウタ

村田沙耶香(新潮社)

 「ひかりのあしおと」と表題作が収められている。
 「ひかり……」でもだいぶ暗黒の世界に引きずり込まれたが、「ギンイロノウタ」はその上をいく暗黒、というか異常でしょ、これは。

 小さいころから愚鈍で冴えない子だった有里。家にも居場所がなく、ノートに「自分が人を殺すシーン」を書き綴ることでストレスを発散させていた。
 そんな彼女が高校生になり、初めてバイトをすることになる。しかし何一つ普通にこなすことが出来ず、有里はしだいに追い詰められていく……。

 しつこい性描写、殺人描写に辟易した。主人公にはまったく共感できないし、恐ろしさばかりが募った。
 通り魔のニュースはちょくちょく耳にするが、彼女のような思考回路なのだろうな、と思わされた。犯人だけが納得できる、おかしな論理がそこには存在する。あるいは有里の家庭環境を知っている人がいたら、親がーとか言うのだろう。だが、こんな親でもまともに育つ子だっているはずだ。有里のアブノーマルさは天然、かつ桁外れだ。
10点

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

村上春樹(文藝春秋)

  高校時代、多崎つくるには4人の親友がいた。完全無欠な共同体のような5人だと思っていたが大学2年の夏、つくるは突然グループから切り捨てられる。30代半ばとなった今でも、それは彼の心に大きな傷を残していた……。

 なぜつくるは友だちに切られたのか、その謎が気になって途中まではぐんぐん読んだ。が、次第に彼の言動に違和感が募った。
 裕福な家に育ち、見た目も良く、女性にもてて、希望する職業に就いている。なのに彼は自分をからっぽな人間だと思い、虚無感に包まれている。ん? これってただの自意識過剰な人? そう思ったが最後、すべてに「?」マークがともった。
 それに友人たちもおかしい。つくるの人間性を否定するようなことをしておきながら、そうするしかなかった、と語る彼ら。いやいや、方法はいくらでもあったはずだ。本当はつくるの味方だと、そっと耳打ちするだけでも良かったのに。
 とまぁいろいろ書いたが、Amazonの「もっとも参考になったカスタマーレビュー」が、この違和感をあますところなく書いていて抜群に面白かった。
 つくるくん、いつまでもたそがれていると今の恋人にもそっぽ向かれるよ、余計なお世話だけど。
70点
 

1Q84 BOOK3

村上春樹(新潮社)

 BOOK1、BOOK2の続き。
 この本では「青豆」と「天吾」の他に、青豆を追跡する「牛河」が語り手として加わる。
 青豆と天吾は再会できるのか? 牛河という追っ手から青豆は逃げおおせるのか?

 1、2巻で謎だった部分は、たいぶ解き明かされた。しかし依然として核の部分が説明されないまま終わっていて、この物語はまだ続くのか? という疑念が残った。
 とりあえず、3巻は「牛河」という要素が加わったことによって、よりスリリングにストーリーが展開するようになった。その点は良かったが、次第に青豆の独断的な言動が鼻に付くようになった。根拠の無い自信ほど鬱陶しいものはないと私は思う。

 この作品、「村上春樹」という看板が掛かっているから、何となく納得させられた気になって読了したが、その実、筆者は読者を置き去りにしていないだろうか。
 有名店の味が貴方には理解できないのですか? という傲慢さがほの見えた気がした。
70点

1Q84 BOOK1,BOOK2

村上春樹(新潮社)

 「青豆」と「天吾」の物語が交互に語られる。
 スポーツ・クラブのインストラクターである青豆。彼女は殺し屋でもあった。DVの加害者をあの世へ送り込むこと、それが彼女の裏の仕事。
 天吾は予備校の講師。文筆の仕事も少し。あるとき新人賞に応募してきた「ふかえり」という女性の原稿の書き直しを依頼される。それは荒削りだが人を惹き付ける何かを持った不思議な原稿だった……。

 数々の村上氏の作品を読んできたが、今回初めて「くどい」と思った。文章の繰り返しが多すぎる。力説したいのは分かるが、そこは敢えてさらりと書いて欲しかった。読む側の「ここが肝かな?」という発見の楽しみを残しておいて欲しかった。

 幻想的な部分があったり、かと思えば非常に生々しい性描写があったり、NHKの集金の話から宗教団体の話まで……その振り幅の大きさにしばしば戸惑った。それら散りばめられたパーツは、やがては収束していった。が、(意図的に?)取りこぼした部分もあり、その不明瞭さが作品全体の印象を損なう結果となっている。
70点

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