村上春樹(講談社)
深夜のファミレスで時間をつぶすマリ。彼女の前に、以前会ったことがある若い男タカハシが現れる。
いっぽうマリの姉のエリは、どこかの部屋で深く眠っている。いつ覚めるとも知れない、深い眠りだ……。
どこまで読んでも地下鉄サリンの話にならないので不審に思ったら、そっちは「アンダーグラウンド」という作品だった。その勝手な勘違いが災いしてか、とても退屈な小説に思えてしまった。
特にエリの部屋の描写は、同じことの繰り返しにしか思えなかった。ここをばっさり削ってラストのAM6:52へ飛んでもまったく問題ないのではないだろうか。
50点
深夜のファミレスで時間をつぶすマリ。彼女の前に、以前会ったことがある若い男タカハシが現れる。
いっぽうマリの姉のエリは、どこかの部屋で深く眠っている。いつ覚めるとも知れない、深い眠りだ……。
どこまで読んでも地下鉄サリンの話にならないので不審に思ったら、そっちは「アンダーグラウンド」という作品だった。その勝手な勘違いが災いしてか、とても退屈な小説に思えてしまった。
特にエリの部屋の描写は、同じことの繰り返しにしか思えなかった。ここをばっさり削ってラストのAM6:52へ飛んでもまったく問題ないのではないだろうか。
50点
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村上春樹、安西水丸(朝日新聞社)
期間限定で開設された村上氏のサイトに寄せられた質問に、村上氏が自ら答えるという内容。
質問の内容が多彩で面白かった。作品のこと、ジャズについて、翻訳とは? 果ては人生相談まで。中には質問者の自慢話っぽいものもあったが(オレ様の知識を聞いて驚けふうな)、そういう輩にも村上氏は丁寧な答えを返す。
心に残ったQ&Aは
Q「本の面白さを、言葉でうまく表現することができない」
A「それは自然なことで、何も恥じることはありません。言葉だけは達者だけど、魂は浅いという人が世の中にはたくさんいます」
言葉も魂も、いっしょに磨かなければと今更ながら私も思った。
70点
期間限定で開設された村上氏のサイトに寄せられた質問に、村上氏が自ら答えるという内容。
質問の内容が多彩で面白かった。作品のこと、ジャズについて、翻訳とは? 果ては人生相談まで。中には質問者の自慢話っぽいものもあったが(オレ様の知識を聞いて驚けふうな)、そういう輩にも村上氏は丁寧な答えを返す。
心に残ったQ&Aは
Q「本の面白さを、言葉でうまく表現することができない」
A「それは自然なことで、何も恥じることはありません。言葉だけは達者だけど、魂は浅いという人が世の中にはたくさんいます」
言葉も魂も、いっしょに磨かなければと今更ながら私も思った。
70点
村上春樹、佐々木マキ(講談社)
その日「ぼく」は、いつもの図書館に本を探しに行った。図書館には、見たこともなかった地階が存在し、そこには謎めいた老人がいた。
老人は「ぼく」が探していた本を貸してくれたが「ここで読んでいけ」と迫るのだった……。
何ともかわいらしい本である。ほぼ文庫本サイズの単行本で、表紙は厚みがあってふわふわと柔らかく、羊男のイラスト入り外箱つき。中身も半分はイラストで、それが内容と非常にマッチしていて、ムードを盛り上げている。
ストーリーはちょっと怖くて、悲しくて、そして何よりドーナッツが食べたくなるのが特徴である。
75点
その日「ぼく」は、いつもの図書館に本を探しに行った。図書館には、見たこともなかった地階が存在し、そこには謎めいた老人がいた。
老人は「ぼく」が探していた本を貸してくれたが「ここで読んでいけ」と迫るのだった……。
何ともかわいらしい本である。ほぼ文庫本サイズの単行本で、表紙は厚みがあってふわふわと柔らかく、羊男のイラスト入り外箱つき。中身も半分はイラストで、それが内容と非常にマッチしていて、ムードを盛り上げている。
ストーリーはちょっと怖くて、悲しくて、そして何よりドーナッツが食べたくなるのが特徴である。
75点
村上春樹(新潮社)
15歳の誕生日に、家出をした少年。彼は四国へと向かう。一方、中野区に住む、不思議な老人ナカタさんも、西を目指して旅をすることになる。
やがて二人の時間は交錯しあい、生と死の混沌とした世界が垣間見えてくる。
いつもながら、リアルな脇役陣がストーリーに深みを与えている。特に、ナカタさんと一緒に旅することになった星野さんが良い。俗物でありながら、心根は素直で温かい。少年が知り合った大島さんの薀蓄もまた、聞き応えがある。
だが、肝心の主役である少年が、私にはどうにも作り物っぽく思えた。あまりにも博識で、あまりにも老成している。
15歳のような30歳はいるかもしれないが、この少年のような、30歳のような15歳はいるはずがない。ナカタさんと少年の話が交互に進んでいくのだが、少年の章を読むのが次第に苦痛になってきたほどだった。
ただ、そんなマイナス部分を補って余りあるほど、魅力のあるストーリーではあった。変な悪ふざけをしてる部分を除けば、神秘的で美しい作品である。
85点
15歳の誕生日に、家出をした少年。彼は四国へと向かう。一方、中野区に住む、不思議な老人ナカタさんも、西を目指して旅をすることになる。
やがて二人の時間は交錯しあい、生と死の混沌とした世界が垣間見えてくる。
いつもながら、リアルな脇役陣がストーリーに深みを与えている。特に、ナカタさんと一緒に旅することになった星野さんが良い。俗物でありながら、心根は素直で温かい。少年が知り合った大島さんの薀蓄もまた、聞き応えがある。
だが、肝心の主役である少年が、私にはどうにも作り物っぽく思えた。あまりにも博識で、あまりにも老成している。
15歳のような30歳はいるかもしれないが、この少年のような、30歳のような15歳はいるはずがない。ナカタさんと少年の話が交互に進んでいくのだが、少年の章を読むのが次第に苦痛になってきたほどだった。
ただ、そんなマイナス部分を補って余りあるほど、魅力のあるストーリーではあった。変な悪ふざけをしてる部分を除けば、神秘的で美しい作品である。
85点
村上春樹(新潮社)
不思議な村上ワールド。現実的でいて、非現実的。
印象に残っているのは間宮中尉の長い話。彼は囚われの身となり、自分は殺されるかもしれない、という恐ろしい立場にいた。そこで「モンゴル人は昔から残忍な方法で人を殺してきた」という事実を知らされ、目の前で人間の皮を剥ぐシーンを見せ付けられる。これ以上の恐怖は存在しないだろう。
75点
不思議な村上ワールド。現実的でいて、非現実的。
印象に残っているのは間宮中尉の長い話。彼は囚われの身となり、自分は殺されるかもしれない、という恐ろしい立場にいた。そこで「モンゴル人は昔から残忍な方法で人を殺してきた」という事実を知らされ、目の前で人間の皮を剥ぐシーンを見せ付けられる。これ以上の恐怖は存在しないだろう。
75点