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よしなしごとども 書きつくるなり
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ピエール瀧(太田出版)

 雑誌「テレビブロス」に連載していた旅行記を単行本化したのが本書。
 オールカラーで1480円は安いと思ったら、装丁が、あのへんな毛が付いてる大学ノートそのもの。持ち歩いているうちに、すっかりくたびれてしまった。
 その辺からして、おふざけムード満点なのだが、中身がまた(良い意味で)頭悪そうでたまらない。

 旅行記といっても、時代に取り残されたようなレジャー施設や意味不明なお祭りなどの取材が多い。そのうすら寒さをストレートに活写していて、楽しいんだか楽しくないんだか、読んでるほうも訳が分からなくなってくる。
 全体的にダラダラした本だが、唯一村田兆治との対談は真面目で面白かった。
60点
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日垣隆(新潮社)

 刑法39条「心神喪失者の行為は、罰しない」
 この一文を盾に、悪意の犯罪者が罪を償うことなく娑婆に出てくる恐怖……。

 文庫本の帯にこうある。「無罪判決」その時、殺人者はニヤリと笑った。
 売らんかなの惹句かと思ったら、どうやら事実らしい。
 80年の新宿バス放火殺人事件、82年の深川通り魔殺人事件の両被告は、判決の瞬間に笑ったというのだ。精神異常者のふりをすれば刑を免れる、まさにしてやったりの笑顔。恐ろし過ぎる。
 また飲酒や覚せい剤による酩酊状態で罪を犯したときは、心神耗弱とみなされて刑が軽減されるという。加重ではなく軽減? まったく信じ難いことである。
 一刻も早くこのような悪法を改正し、少しでも被害者が救われるようにして欲しいものである。
70点
東野圭吾(集英社)

 短編集。『臨界家族』が良かった。
 哲也の四歳になる娘・優美は、あるアニメが大好き。それのキャラクターグッズをおねだりしては親を困らせていた。次々に売り出される新商品、哲也は買うことを拒否するが……。

 こんなに親の気持ちが痛いほど分かるテーマも珍しいかも。安易におもちゃを買い与えたくはない。でも周りがみんな持っているのに、ウチの子だけが持っていないという状況はつら過ぎる。そんな親心を徹底的にリサーチする企業。これはノンフィクションかもしれない、と思ってしまった。
 その他、鳴かず飛ばずの作家の悲哀を描いた作品がいくつかあったが、いずれももうひとひねり欲しい内容であった。筒井康隆氏ほどの毒もなく、かといって星新一氏ほどの軽やかさもなく、中途半端な印象。
65点
東野圭吾(集英社)

 1973年、大阪で質屋の主人が殺される。事件は迷宮入りとなり、19年という歳月が経つ。被害者の息子・亮司と、容疑者の一人であった女性の娘・雪穂。成長した二人の周りでは、怪しい事件が次々に起きるが……。

 主人公の二人が、心情をほとんど語らないという珍しい手法が採られている。そのせいか、読了してもよく分からない部分が多々あった。なぜ殺さなければならなかったのか、なぜレイプまでする必要があったのか。この二つだけでも本人の口から説明して欲しかった。
 さらに最大の謎は、亮司が雪穂のためにここまで出来たのはなぜかということである。二人の間に愛情があったのかどうかも記述されていないので、亮司の想いの重さが量れず、読んでいて困惑した。

 この長さを飽きさせずに読ませる筆力はさすがとしか言いようがないが、余計なエピソードを盛り込みすぎのような気もした。
70点
東野圭吾(文藝春秋社)

 ごく普通のサラリーマンである杉田平介。彼の妻・直子と娘・藻奈美がバス事故に遭い、妻は死亡し、娘は奇跡的に助かった。
 しかし意識を取り戻した娘が発した言葉は「あなた……」。娘の肉体に妻の意識が宿っていたのだった。

 平介の揺れ動く心が丁寧に描かれている。娘を失ったような、妻を失ったような、どっちつかずの悲しみ。美しく成長してゆく直子に対する、妬みと猜疑心。さすが手だれの東野氏。
 しかしながら、盗聴器のくだりはやりすぎではないだろうか。平介の人間性を疑ってしまった。
75点
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