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よしなしごとども 書きつくるなり
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東野圭吾(講談社)

 強盗に銃で頭を打ち抜かれた青年・成瀬は、世界初の脳移植手術を受けた。
 一命を取り留めた彼は、だが次第に性格が凶暴化し、元の性格を失なってゆく。自分が他人に侵食されていく恐怖……それは脳移植のせいなのか。

 成瀬の「変身」ぶりが読ませる。初めは快活になれて良かったね、という程度のものだったのに、気が付いたら大悪党になっていた。彼の焦りは想像するに余りある。
 ただ、物語の要所要所に女性が絡んでくるので、それが全体を軟派な印象にさせているような気がした。
70点
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東野圭吾(集英社)

 短編集。
 『おっかけバアさん』が面白かった。
 夫を亡くし、つましく暮らしていたおばあさん。ところがある役者に入れ揚げるようになり、全てを失ってゆく、というストーリー。

 こういうことは年齢に関係なく起こり得ることだと思うが、主人公が歳を取ってる分だけ余計に哀れで、情けなさが倍加する。
 オチも凄まじいが、でもおばあさんは本懐を遂げたふうにも取れ、だからこそ「笑って」いたのかもしれない。
65点
東野圭吾(集英社)

 十二編の短編集。タイトル通り、毒のある話が多い。
 私が気に入ったのは『手作りマダム』。
 手作り大好きな主婦が、団地内の主婦を集めて頻繁にティーパーティを催す。
 手作りの品々はどれも粗悪なものばかり。だが上司の夫人なので、それを指摘するわけにも行かず……。

 本当にありそうな話である。と思ったら、文庫巻末にある京極夏彦氏との対談で「さんざん自分が迷惑した」と書かれていた。
 それから「ホームアローンじいさん」の、おのれの欲望に振り回されるじいさん。これも実際いそうな感じである。
70点
東山彰良(宝島社)

 近未来の刑務所では、囚人たちの首にマイクロ・チップが埋め込まれていた。逃亡を図ると、それが作動して眼圧が急上昇し失明する仕組みになっていた。
 あるとき刑務所にテロリストが乱入し、所内は大混乱に陥る。それに乗じて脱走を企てた囚人たちの運命は。

 設定は面白いが、設定だけが面白い、とも言えそうだ。主人公が危機に陥ったり脱したりと、胸のすく展開はあるが、状況の描写がかなり分かりづらい。誰のセリフなのか、誰の行為なのか、わざとはぐらかすような書き方で、次第に嫌気が差した。
 主人公も都合のいいときだけ熱くなるイヤな奴だが、これは男性が読んだら違う意見を持たれそうではある。
65点
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