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よしなしごとども 書きつくるなり
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京極夏彦(集英社)

 世に名高きベストセラーの数々を「すべてがデブになる」にしちゃったのが本書。
 米俵のようにミトコンドリアが太っているという「パラサイト・デブ」。
 死人になってなぜか太り出した男たちの、悲哀を描いた「脂鬼」。
 などなど、タイトルからして人を喰っている。
 遊び心満載で、特に各タイトルページの裏にある、ホンモノの作家に宛てた一文は、冗談なのか本気なのかよく分からないが、とにかく面白い。
 また、最後に収録されている「ウロボロスの基礎代謝」は、夢の中で夢を見ているような設定で、頭がよじれそうだった。
80点
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桐江キミコ(小学館)

 十二の短編が収められているのだが、どれも味わい深くていい作品であった。
 一つ目の『お月さん』。
 無用にデカい、OLの桜子さん。ゾウアザラシみたいな桜子さん。部長に怒られてばかりの桜子さん。彼女が会社を辞めたとき、変わったことと変わらなかったこととは……。

 あまりに身につまされる話で、心がキリキリと痛んだ。ただ大柄というだけで、実際より鈍くさく思われたり、歩き方を「のっしのっし」なんて形容されたりするのだから堪らない。
 彼女は傷付けてもいい存在だと言わんばかりの語り手の残酷さに、ぞっとした。
 他に、女手一つで子どもを育てている、バーのマダムの話『薔薇の咲く家』も哀しい物語であった。幼稚園のママたちのひそひそ言い合う声が、行間から立ち上るようだった。
95点
桐野夏生(新潮社)

 無人島に漂着した清子と隆夫婦。その後、二十三人の日本の若者、十一人の中国人が島に流れ着く。清子以外は全員が男性という異常な環境のなかで、四十七歳の清子は女王然としてふるまうのだった……。

 清子の、あまりにもあけすけな自己中心っぷりに呆然としながら、しかしいっぽうでは感嘆しながら読んだ。極限状態のなか、彼女の「絶対生き抜いてやる」という執念は、ぐだぐだになった男より、よっぽど男らしく清々しく感じられた。
 また、この本の面白さは、その独特の地名にもあるだろう。謎のドラム缶が放置された浜は「トーカイムラ」。数人の死体が葬られた岬は「サイナラ岬」。小高くて平べったい岬は「コウキョ前広場」。言い得て妙。
 ラストの章がまた意外性たっぷりで読ませる。ある人物による聞き書きなので、どこまで本当の話か分からないのだが、それが逆にリアリティを感じさせるから不思議だ。
80点
桐野夏生(集英社)

 母親に捨てられ娼館で育ったアイ子。中年となった彼女は悪事の限りを尽くす。窃盗、放火、殺人……邪魔者は消すという考え方の彼女の行き着く先はどこか。

 アイ子のあまりの毒婦っぷりに、寝る前にはとても読む気になれなかった。実は私の身近にこんな女性がある時期存在したのだ。もちろん殺人まではしてなかったと思うが、舌先三寸で言いくるめるのが得意で、他人は騙すが猜疑心が強く、性欲の塊で、おまけに大柄小太り。思い出すだけで気分が悪くなる。
 閑話休題。
 アイ子は「育ちが悪い」と言われるのが一番頭にくるという。生い立ちは自分では変えられないことなので、そこには唯一共感できた。しかし、それは犯罪の免罪符には決してなり得ない。
 終盤で彼女には「衝撃の真実」が告げられ腑抜けのようになっていたが、正直ザマーミロと思ってしまった。こんなに主人公の破滅を期待した小説はいまだかつて無かったかもしれない。
85点
桐野夏生(新潮社)

 小説家である景子は、10歳のとき25歳の男に拉致され、一年間監禁されたという過去を持つ。その顛末を記した『残虐記』という小説の原稿を残し、彼女は忽然と姿を消す。彼女自身の手によって明かされる、25年前の事件の真実とは。

 拉致される瞬間の描写、犯人に暴力を振るわれる描写に心底震えた。景子の絶望を思い、自分だったら、さらにはわが子だったらと考えると恐ろしさに胸が詰まった。
 そして救出されてからの彼女の運命もまた過酷であった。世間から向けられる好奇の目に耐え、そばには不安定な母親がいる。景子が空想の世界に逃げ込むのも無理はない。
 しかし彼女はやがて空想の世界でも絶望する。男の性というものが理解できない、この目で見たことの「中身」が分からない、と。犯人をただの異常者だと切って捨てられず、事件について考え続ける彼女に哀れを感じた。
80点
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