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よしなしごとども 書きつくるなり
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川上弘美(新潮社)

 古道具を扱う「中野商店」でバイトをするタケオとヒトミ。なんとなく親しくなる二人だが、タケオがあまりに寡黙なせいか、なかなか親密になれない。
 いっぽう店主の中野さんは、ヘンな客にペーパーナイフで刺されたり、女で失敗したり、なかなか賑やかな人生。
 彼らと、中野商店の、いわくありげな常連客が巻き起こす、小さな事件のあれこれを描く。

 どこを切り取って紹介しようかと悩むほど、面白いエピソード満載である。中野さんの愛人であるサキ子さんが書いたという「エロ小説」。さわりだけ書かれているのだが、直截的でないエロさが素晴らしく、川上氏はこういうのも書けるのかと唖然とした。
 それからタケオに対するヒトミの観察眼もまた鋭くていい。
 『なんかタケオって、いつもこういう感じ。自分の方からはほとんど人に気をつかわないくせに、人から気をつかわれることを強要する感じ。』という一文などに、ヒトミの苛立ち、悲しみが仄見える。
85点
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川上弘美(幻冬舎)

 高校教師であるマリエには、ミドリ子という教え子がいた。ミドリ子には露天商を営む紅郎という兄がいて、マリエは紅郎と付き合うようになる。
 紅郎の部屋にはマキさんとアキラさんという幽霊が出るし、ミドリ子はたびたびやってくるしで、マリエはとりとめのない「こわさ」を抱くのだった……。

 川上氏が描く恋愛にしてはめずらしく、この作品には濃い部分があった。マリエが姉と春画の真似をして遊ぶシーンしかり、ミドリ子をしつこく追いかける鈴本鈴郎しかり。
 だが思わず身を乗り出すと、ひらひらとはぐらかされる。さすがは川上氏。
 個性的で魅力的な挿話もいつもどおりたくさんある。特に姉のする作り話が傑作。そこだけを膨らませて、別な小説を書いて欲しいほどである。
90点
川上弘美(新潮社)

 エッセイ集。
 「あるようなないような」もかなり楽しめたが、このエッセイもまた、非常に面白かった。

 今回は、川上氏と私の共通点が判明した『わからないことなど』が、特に興味深かった。  「体が大きい。大女なのである。」で始まるこのエッセイ、あぁ分かる分かる、と貪り読んでしまった。標準から外れているという、ちょっと切なくてもやもやした感情を、うまく表現してくれている。
 さらに、随所に川上氏の読まれた本の感想が書かれている。それがまたとてつもなく面白そうだから困ってしまう。
 イタロ・カルヴィーノ「柔らかい月」、久世光彦「桃」あたりはいつか必ず読むぞ、と心に決めた。
95点
川上弘美(新潮社)

 ニシノ君をめぐる10の連作短編集。
 少年の、大学生の、社会人の、死ぬまぎわのニシノ君について、その頃関係のあった女性が彼について語っている。
 女性の性格がまさに十人十色で興味深い。ニシノ君という人は、どんな女性でも好きになれるのか……と思いかけたあたりで
 「どうやったら誰かを愛せるのか」なんて彼はつぶやく。どうやったらってあなた、そんなこと言っておきながら、すぐセックスしたがるのは問題では?
 なんて私もついツッコミを入れたくなる。
 一貫してつかみどころがなくて、ユーレイのようなニシノ君。まっとうな恋愛や結婚など、とても出来そうにもないニシノ君が、次第に哀れに思えてくる。
 でも、どっこい彼は彼なりに「この世」と折り合いをつけながら、心地よく一生を送ったのかもしれない。悩みはあったって、いつもそれを聞いてくれる女性がそばにいたわけだから。
90点
川上弘美(中央公論新社)

 男子高校生の翠は、母と祖母との三人暮らし。平山水絵という恋人もいるし、花田という友達もいる。ごく普通の高校生。
 と彼は自分では思っているが、実は常人とは少しずれた感覚の持ち主なのであった……。

 読売新聞に連載されていた当初も、毎日楽しく読んでいたが、こうして単行本になったものを通して読むと、またいっそう惹き込まれる。
 高校生という、大人でも子供でもない中途半端な状態にいる翠は考える。「自由とは、なんとよるべないものなんだろう。自由とは、なんとこころぼそいものなんだろう」。
 自分が高校生の頃に漠然と感じていた不安感というものを、翠が代弁してくれたような気がした。
 川上氏は嘘ばなしも上手だが、やはりこうした本当らしい小説のほうが私は好きだ。
90点
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