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古道具 中野商店

川上弘美(新潮社)

 古道具を扱う「中野商店」でバイトをするタケオとヒトミ。なんとなく親しくなる二人だが、タケオがあまりに寡黙なせいか、なかなか親密になれない。
 いっぽう店主の中野さんは、ヘンな客にペーパーナイフで刺されたり、女で失敗したり、なかなか賑やかな人生。
 彼らと、中野商店の、いわくありげな常連客が巻き起こす、小さな事件のあれこれを描く。

 どこを切り取って紹介しようかと悩むほど、面白いエピソード満載である。中野さんの愛人であるサキ子さんが書いたという「エロ小説」。さわりだけ書かれているのだが、直截的でないエロさが素晴らしく、川上氏はこういうのも書けるのかと唖然とした。
 それからタケオに対するヒトミの観察眼もまた鋭くていい。
 『なんかタケオって、いつもこういう感じ。自分の方からはほとんど人に気をつかわないくせに、人から気をつかわれることを強要する感じ。』という一文などに、ヒトミの苛立ち、悲しみが仄見える。
85点
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