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荻原博子(角川書店)
建材には向かないとされるクリの木を使って、木造軸組工法で家を建てた筆者の奮闘記。
自分も家を建てる前にこの本に出会っていれば……とほぞを噛んだ。こじゃれた洋風建築に目を奪われ、和風と聞いただけで毛嫌いしていた自分がどんなにマヌケだったか思い知らされた。
ただ、どんなに頑張っても、この筆者のマネはできないと思う。第一に豊富なコネ。こういう家造りは人脈がものをいう。それと金。ふた言目には「手が出ない」と言いつつ、かなりな資金力である。
あまりに恵まれていて、苦労話も自慢話に思えてくる。次第に不快感が募る話ではある。
70点
建材には向かないとされるクリの木を使って、木造軸組工法で家を建てた筆者の奮闘記。
自分も家を建てる前にこの本に出会っていれば……とほぞを噛んだ。こじゃれた洋風建築に目を奪われ、和風と聞いただけで毛嫌いしていた自分がどんなにマヌケだったか思い知らされた。
ただ、どんなに頑張っても、この筆者のマネはできないと思う。第一に豊富なコネ。こういう家造りは人脈がものをいう。それと金。ふた言目には「手が出ない」と言いつつ、かなりな資金力である。
あまりに恵まれていて、苦労話も自慢話に思えてくる。次第に不快感が募る話ではある。
70点
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荻原浩(光文社)
不眠や物忘れに悩んだ佐伯は、精神科を受診する。そこで思いもよらぬ病名、「若年性アルツハイマー」を宣告される。次第に進む病状に、彼は恐怖と焦りを覚えるのだった……。
アルツハイマーという病気の恐ろしさに、幾度も読むのを中断させられた。
決して回復することはなく、進行を遅らせるのがやっとだというこの病気。自分が何者であるのかも分からなくなっていくというこの病気。それは「死」よりも残酷なことではないだろうか。
終盤、佐伯が昔陶芸をならった師のもとを訪れる部分がとても良かった。達観とまではいかないが、彼が穏やかな気持ちを取り戻す瞬間が確かにあったことを丁寧に描いていて、良かった。
85点
不眠や物忘れに悩んだ佐伯は、精神科を受診する。そこで思いもよらぬ病名、「若年性アルツハイマー」を宣告される。次第に進む病状に、彼は恐怖と焦りを覚えるのだった……。
アルツハイマーという病気の恐ろしさに、幾度も読むのを中断させられた。
決して回復することはなく、進行を遅らせるのがやっとだというこの病気。自分が何者であるのかも分からなくなっていくというこの病気。それは「死」よりも残酷なことではないだろうか。
終盤、佐伯が昔陶芸をならった師のもとを訪れる部分がとても良かった。達観とまではいかないが、彼が穏やかな気持ちを取り戻す瞬間が確かにあったことを丁寧に描いていて、良かった。
85点
荻原浩(新潮社)
とある広告代理店が、新しい香水を発売するために、女子高生たちにある噂を吹き込む。
「レインマンというレイプ魔が女性の足首を切断するらしい。が、その香水をつけていれば襲われずに済む」と。
またたく間に噂は広がり、戦略は成功したかにみえた。しかしその後足首のない他殺体が発見され、噂は現実となる……。
どの場面も現実感があってとても良かった。主人公の刑事・小暮と、その娘の会話。渋谷にたむろする少女たちの生態。そして少女が犠牲者となるシーン。どれもうまい。
また、無駄な登場人物がいないため、ストーリーがとても分かりやすかった。分かりやすいのに犯人は文章の中に巧妙に隠されていて、正体が明かされるまで興味を持って読むことができた。
そして最後の一行。そうきたか。小暮の今後が気になるところである。
80点
とある広告代理店が、新しい香水を発売するために、女子高生たちにある噂を吹き込む。
「レインマンというレイプ魔が女性の足首を切断するらしい。が、その香水をつけていれば襲われずに済む」と。
またたく間に噂は広がり、戦略は成功したかにみえた。しかしその後足首のない他殺体が発見され、噂は現実となる……。
どの場面も現実感があってとても良かった。主人公の刑事・小暮と、その娘の会話。渋谷にたむろする少女たちの生態。そして少女が犠牲者となるシーン。どれもうまい。
また、無駄な登場人物がいないため、ストーリーがとても分かりやすかった。分かりやすいのに犯人は文章の中に巧妙に隠されていて、正体が明かされるまで興味を持って読むことができた。
そして最後の一行。そうきたか。小暮の今後が気になるところである。
80点
荻原浩(双葉社)
秀吉は自殺するつもりだった。三十八にもなって、金もなく、仕事も失いかけ、あるのは借金と前科。
そんな彼の前に、一人の少年が現れた。彼は天啓でも得たかのように少年を誘拐してしまう。その少年がヤクザの一人息子だとも知らずに。
出だしからかなり面白かった。秀吉が飛び降り自殺をしようとする場面。靴を脱いで手すりまで行き、また戻り、靴下を脱ぐ。足がとんでもなく臭かったから。これには笑った。
ヤクザやチャイニーズマフィアとの追いかけっこは、ちょっと出来すぎ感はあるが、テンポがよくすいすい読むことができた。
ラストも温かみがあって、良い締めだった。
90点
秀吉は自殺するつもりだった。三十八にもなって、金もなく、仕事も失いかけ、あるのは借金と前科。
そんな彼の前に、一人の少年が現れた。彼は天啓でも得たかのように少年を誘拐してしまう。その少年がヤクザの一人息子だとも知らずに。
出だしからかなり面白かった。秀吉が飛び降り自殺をしようとする場面。靴を脱いで手すりまで行き、また戻り、靴下を脱ぐ。足がとんでもなく臭かったから。これには笑った。
ヤクザやチャイニーズマフィアとの追いかけっこは、ちょっと出来すぎ感はあるが、テンポがよくすいすい読むことができた。
ラストも温かみがあって、良い締めだった。
90点
奥田英朗(文藝春秋社)
五つの作品が収められている。表題作の「イン・ザ・プール」が面白かった。
ストレスから体調を崩した和雄は、とある精神科医に掛かる。
医師の名は伊良部。診察は適当で、注射フェチで、お調子者の彼に和雄は不信感を持つ。
そんな折、ストレス解消のために和雄は水泳を始める。伊良部も泳ぐことに興味を持ち、ついには二人で水泳にハマってしまうが……。
伊良部がいい。こんな精神科医がいたら、私もかかってみたい。悩みなんか霧散しそうだ。
彼はカウンセリングなんか無駄だと言い切る。「生い立ちも性格も治らないんだから、聞いてもしょうがないじゃん」と。豪快かつシンプル。
伊良部氏の活躍(?)がもっと読みたくなった。
70点
五つの作品が収められている。表題作の「イン・ザ・プール」が面白かった。
ストレスから体調を崩した和雄は、とある精神科医に掛かる。
医師の名は伊良部。診察は適当で、注射フェチで、お調子者の彼に和雄は不信感を持つ。
そんな折、ストレス解消のために和雄は水泳を始める。伊良部も泳ぐことに興味を持ち、ついには二人で水泳にハマってしまうが……。
伊良部がいい。こんな精神科医がいたら、私もかかってみたい。悩みなんか霧散しそうだ。
彼はカウンセリングなんか無駄だと言い切る。「生い立ちも性格も治らないんだから、聞いてもしょうがないじゃん」と。豪快かつシンプル。
伊良部氏の活躍(?)がもっと読みたくなった。
70点