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ウランバーナの森

奥田英朗(講談社)

 '79年の夏。世界的に有名なポップスターであるジョンは、妻ケイコと息子とともに、軽井沢でのんびりと過ごしていた。だが、体調を崩して病院通いを余儀なくされる。その病院から家に帰る道すがら、彼は亡くなったはずの人たちと再会するという、不思議な体験をする。

 この物語はフィクションであるが、「あの」ジョンという人間はこういう性格だったのだろうな、と思わせる説得力がある。いじめっ子だった少年時代。捨て鉢だった青年時代。
 特に友達の家に招かれて、そのあまりにも温かい家庭の雰囲気に、つい暴言を吐くシーンなどは、彼のねじれた心がよく表れていると思った。
 ただ、全編を通しての便秘話にはちょっと辟易した。面白いけど笑えない。
65点
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最悪

奥田英朗(講談社)

 小さな鉄工所の社長・川谷は、騒音問題で近隣から責め立てられていた。銀行員のみどりは、支店長のセクハラや不真面目な妹のことで頭を悩ませていた。チンピラの和也は仲間と働いた盗みがもとで、ヤクザに脅迫される羽目に陥っていた。
 三人の運命がやがて交じり合い、とんでもない犯罪へと落ちてゆく。

 それぞれの生活が丁寧に描かれていて、引き込まれた。特に川谷に襲いかかってくる数々の不運は、リアルで同情を禁じ得なかった。
 ある「事件後」の彼らの逃避行には少し無理があるような気がしたが、その点以外は完璧と言っても過言ではない一冊であった。
95点

尾崎翠 集成(上)

尾崎翠、中野翠・編(筑摩書房)

 短編集。なかでも『第七官界彷徨』の評判が良かったので読んでみたのだが……少しも面白くなかった。
 私の読解力の無さが元凶だとは思うが、とにかく延々「この人たちは一体?」と思い続けながら、読んだ。

 主人公である町子が、二人の兄と従兄の住む家で、住み込みで働くことになる。三人の男性は揃いも揃って風変わり。特に町子の二番目の兄・二助はコケの研究のために人糞を部屋で煮詰めたりするのだった……。
 あぁ、粗筋を書くだけでいやになる。みんな不様で自意識過剰でぐだぐだ。これがたとえば金井美恵子氏の作品なら、そこにひとつまみの面白みが感じられるのだが、それも無い。
 編者の中野翠は激賞しているが、私には合わなかった。
45点

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