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レインツリーの国

有川浩(新潮社)

 昔読んだ本の感想をネット上で見つけた伸行。物語のラストに納得できず、ずっと心に引っ掛かっていた彼は、それを書いた「ひとみ」にメールを送る。そこから二人の交流が始まり……。
 そうとは思わずにこてこての恋愛モノを読んでしまった。ま、でもなかなか良かった。
 障害をもつひとみは、ときに手が付けられないほどわがままになる。伸行も彼女を理解しようと努力するが、的外れなことをしたりしてしまう。二人の想いがすれ違うたび、苛立ちが募る。
 ひとみは本当に「面倒な女」だ。今まで受けたいろいろな不親切、無理解を、全部伸行にぶつけて彼を試す。普通の男性ならすぐに嫌になるだろう。でも伸行は我慢強く彼女に付き合う。惚れた弱みか、とてつもない包容力のなせるわざか。
 こんな男性いないよなぁと思いつつ、彼の優しさにほだされて(?)一気に読了させられてしまった。それでもやっぱり、こんな男性はいないと思う。しつこい?
70点
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ニッポンの嵐

嵐(角川グループパブリッシング)

 2010年春。嵐の5人がそれぞれの興味の赴くまま、日本各地へ旅した……全国の小・中・高等学校へ贈られた本のポケット版。
 これだけの人気グループの一員なら、おそらくどこへ行っても誰と会ってもあまり拒絶されることは無いだろう。そういったことを差し引いて考えても、5人は常にすっと場に溶け込む能力を持っているような気がした。
 櫻井くんの旅を紹介したいところだが、松本潤くんの旅がとても印象に残った。隠岐の島で暮らす人々に会う旅。身の丈に合った暮らしで、日々を豊かに暮らす人々。島の魅力は「人」だと言い切る高校生。こんなすごい場所が日本にあるなんて……老後は離島もいいな、なんて柄にもなく思ってしまった。

 余談ですが。
 ポケット版ということで、寄贈版をそのまま縮小したのはわかるけど、字が小さすぎてつらかったー。
採点なし

十角館の殺人

綾辻行人(講談社)

 これがデビュー作という事実にまず驚いた。話の展開はスピーディーだし、犯人の正体には意外性はなかったが、トリックはよくできていると思う。
 しかぁし!
 今回私が一番言いたいことは文庫版の解説について。何が言いたいんだ、鮎川哲也氏。
 まず、クリスティの「そして誰もいなくなった」とこの作品を比較している点。初めに作り出すことの難しさを、故意に無視しているように感じられる。改造してより良くなるのは、至極当然の事であろう。
 そして一部の読者が評論家気取りで新人を叩くのが面白くない、と。そんなことを「解説」に書くこと自体どうかと思うし、つまらない作品を読んだら誰しも「つまらない」と言ってしまうと思うがどうだろうか。
80点

どんどん橋、落ちた

綾辻行人(講談社)

 五つの中短編集。
 いずれも最後に「さて、犯人は?」という質問が読者に投げ掛けられている。もちろん私のような間抜けには一つも分からなかった。
 「伊園家の崩壊」を紹介しよう。明るく平和だった伊園家。だが母・常が狂死してからすべての歯車が狂い始め、一家は崩壊の道を辿る。それは娘・笹枝が殺害されるという事件で、決定的なものとなる。
 と、ここまで読んで気付かれたかたも多いと思うが「イソノ家」と書くと、よりピンとくるだろうか。筆者は「フィクション」だということを強調しているが、あの平和な家族がこんなことになったら、という仮定の話として読むべきなのだろうか……ちょっと悪趣味な気もした。
65点

四〇九号室の患者

綾辻行人(森田塾出版)

 自動車事故で大けがをした「わたし」は、記憶を失って精神科病棟に入院を余儀なくされていた。
 やがて少しずつ記憶が戻りはじめるが、それはおぞましい殺人の記憶だった……。
 作者は21歳のときに、この作品の草稿をしたためたそうだ。なるほど、文章が少々青臭い。ラストのどんでんがえしも、私でさえ予想がついた。
 きっとこの作品は、綾辻氏のファンだったら楽しめるのではないだろうか。例えて言うなら、今ではすっかり成功した画家の、若かりし頃のラフスケッチを見せてもらったような、そんな感覚だろうか。
60点

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