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よしなしごとども 書きつくるなり
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桐野夏生(文藝春秋社)

 スイス人と日本人の混血児である「わたし」とユリコ。凡庸な「わたし」と絶世の美少女ユリコは互いを憎悪し合う。
 やがて二人は、とある一流学園の生徒となり、和恵とミツルという少女たちと出会う。四人の人生は、交錯しながら次第に奈落の底へと落ちてゆく……。

 なんてタイトルどおりの作品なのだろう。主人公の四人が四様の異常さで迫ってくるのだ。
 まず主な語り手である「わたし」。彼女は悪意のかたまりのような人間で、その話を信用していいのかどうか分からないような仕掛けになっている。
 娼婦となったユリコと和恵の手記もまた凄まじい。人はどこまで堕ちることができるのか、競い合っているかのようだ。

 起承転、まで面白く読んだが、結がよくない。この部分は不必要な気がしたのだが、すべてが過剰なこの作品、最後まで「行き過ぎ」感を出したのかもしれない。
80点
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銀色夏生(角川書店)

 著者が昔住んでいた土地に家を建て、庭を造った。その一年にわたる、庭が出来ていく過程の写真集。

 300坪という広大な土地。好きな木はすべて植えたという木々。花、石、ガーデンファニチャー、屋根つきの渡り廊下、デカいガレージと倉庫……その庭の第一印象は「いったいいくら掛かったのだろう?」であった。
 ここまですごいと嫉妬心は湧いてこず、ただ驚くばかりであった。
 この奔放でだだっ広い庭が、今現在どうなっているのか気になるところである。
60点
永井するみ(双葉社)

 六つの短編集。癖のない文章で、さらりと読みやすい。
 内容的には、ほとんどの話が「殺人」に必然性がないような気がした。簡単に言うなら「何も、殺さんでも」である。
 だが筆者はそれが言いたかったのかもしれない。犯人にしてみれば充分な理由があり、それは他人には理解されなくてもかまわない、ということだ。
 最後の「雪模様」が一番はらはらした。幼い子供は手にかけないで欲しい、とやはり思ってしまう。
70点
なかがわみどり・ムラマツエリコ(三笠書房)

 楽して金儲けしたい。誰だってそう思うけど、そうは問屋が卸さないのが現実ってもの。でもこの二人の作者は、それを実現するべくk(金).m(儲け).p(プロジェクト)を始めた。こういう本も、その活動の一環なのだそう。

 内容は、格言集のような、つぶやきのような。心に響いたのは、人間嫌いについてのコトバ。ほんとは愛されたいくせに、でも無理っぽいから「そんなのいらない」って言ってない? という意味の部分。あうう、そうかもしれない。
65点
中勘助(岩波書店)

 強姦された若い娘は、加害者である異教徒の男に、熱烈に恋してしまう。それを彼女に打ち明けられた苦行僧は、あろうことか彼女と半ば強引に関係を持ち、妖術によって互いを犬に変えてしまう。

 この作品、雑誌に掲載された当初、伏字にされたそうである。なるほど、性描写の部分はかなりきわどい。
 だがそこに薄っぺらい表現は微塵もなく、ただ「性」に翻弄される人間の悲しさが、叩きつけるように描かれている。
 苦行僧の浅ましい行為や、若い娘の潔癖であろうとするのに奈落に堕ちて行くさまなどが、ぐいぐいと心に迫ってきた。
85点
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