Back To The Past
よしなしごとども 書きつくるなり
長い長い殺人
宮部みゆき(光文社)
「お財布」が語り手となって登場人物の行動が明らかになるという手法。下品な人間はお財布も下品、この辺の設定はうなづける。
でも犯人は……推理小説の掟、犯人は物語の中で主要な登場人物の中にいなければいけない……に抵触しているのでは。その点において、少しだけ違和感があった。
75点
「お財布」が語り手となって登場人物の行動が明らかになるという手法。下品な人間はお財布も下品、この辺の設定はうなづける。
でも犯人は……推理小説の掟、犯人は物語の中で主要な登場人物の中にいなければいけない……に抵触しているのでは。その点において、少しだけ違和感があった。
75点
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錦繍
宮本輝(新潮社)
いろんな内容がぎっしり詰まった、幕の内弁当みたいな小説。まず、往復書簡による文章(これがとても効果的に主人公二人の心情を吐露させている)。他には思い付くままに挙げると、無理心中、十数年後の再会、障害を持つ子供、モーツアルトの流れる喫茶店、スーパーの女店員……。
何についてここに書くのが適当であろうか? 二人の主人公の愛について? 無理心中を図った女性の業について?
これは柄じゃないので、いつものでたらめ書評的に話を進めると……主人公亜紀の父親の告白部分が良い。「好きな女がおるんや」……男はいくつになっても美しい女性に弱いらしい。全体的に悲しいトーンのこの小説のなかで、数少ない心和むシーンである。
85点
いろんな内容がぎっしり詰まった、幕の内弁当みたいな小説。まず、往復書簡による文章(これがとても効果的に主人公二人の心情を吐露させている)。他には思い付くままに挙げると、無理心中、十数年後の再会、障害を持つ子供、モーツアルトの流れる喫茶店、スーパーの女店員……。
何についてここに書くのが適当であろうか? 二人の主人公の愛について? 無理心中を図った女性の業について?
これは柄じゃないので、いつものでたらめ書評的に話を進めると……主人公亜紀の父親の告白部分が良い。「好きな女がおるんや」……男はいくつになっても美しい女性に弱いらしい。全体的に悲しいトーンのこの小説のなかで、数少ない心和むシーンである。
85点
あ・うん
向田邦子(文藝春秋社)
戦前。妻と娘、そして父親と質素に暮らす水田。見栄えが悪く無骨な彼だが、その妻たみは、なかなか出来た妻であった。
一方水田の友人である門倉は、中小企業の社長で羽振りが良く、華がある性格で、女性関係も派手だ。
そんな正反対の二人だが、なぜかウマが合い、男同士の友情で結ばれていた。しかしまた、二人は気付いてもいた。門倉が、水田の妻たみに密かに想いを寄せていることに……。
戦前の日本の様子など、もちろんこの目で見たことはないが、この作品を読むとその頃の庶民の暮らしぶりが本当に良く分かる。筆者が脚本家でもあるせいか、ひとつひとつのシーンが、映像として浮かんでくるようである。
85点
戦前。妻と娘、そして父親と質素に暮らす水田。見栄えが悪く無骨な彼だが、その妻たみは、なかなか出来た妻であった。
一方水田の友人である門倉は、中小企業の社長で羽振りが良く、華がある性格で、女性関係も派手だ。
そんな正反対の二人だが、なぜかウマが合い、男同士の友情で結ばれていた。しかしまた、二人は気付いてもいた。門倉が、水田の妻たみに密かに想いを寄せていることに……。
戦前の日本の様子など、もちろんこの目で見たことはないが、この作品を読むとその頃の庶民の暮らしぶりが本当に良く分かる。筆者が脚本家でもあるせいか、ひとつひとつのシーンが、映像として浮かんでくるようである。
85点
となり町戦争
三崎亜記(集英社)
ある日、地元の広報紙に掲載された「となり町との戦争のお知らせ」。「僕」は理解も納得もできぬまま、敵の偵察業務をすることを命じられる。
ただ、戦争とは言っても、戦車が街を行きかうわけでなし、銃声が響くわけでもない。それなのに、広報紙には「戦死者」の数だけが載っている……。
町が、ひとつの政策として戦争を遂行する、という不気味な設定が効いている。そこには個人の思いが入り込む余地はないし、すべては、人の死さえ事務的に処理されていく。
その静けさ、容赦のなさがとても恐ろしかった。
全体的には気に入ったが、香西さんとの恋愛じみた話はいただけなかった。
彼女の代わりに、職務と自己の間で揺れる、繊細な男性を登場させたほうが、よりストーリーが引き締まったのではないだろうか。
70点
ある日、地元の広報紙に掲載された「となり町との戦争のお知らせ」。「僕」は理解も納得もできぬまま、敵の偵察業務をすることを命じられる。
ただ、戦争とは言っても、戦車が街を行きかうわけでなし、銃声が響くわけでもない。それなのに、広報紙には「戦死者」の数だけが載っている……。
町が、ひとつの政策として戦争を遂行する、という不気味な設定が効いている。そこには個人の思いが入り込む余地はないし、すべては、人の死さえ事務的に処理されていく。
その静けさ、容赦のなさがとても恐ろしかった。
全体的には気に入ったが、香西さんとの恋愛じみた話はいただけなかった。
彼女の代わりに、職務と自己の間で揺れる、繊細な男性を登場させたほうが、よりストーリーが引き締まったのではないだろうか。
70点
葉隠入門
三島由紀夫(新潮社)
「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という言葉で有名な「葉隠」。その書に対する、三島なりの解釈を表した一冊。
周知の事実であるが、三島は割腹自殺を遂げた。そのことを思うに付け、彼が葉隠に心酔したわけが透けて見えるようである。常に死を意識し、それを身近なものとして捉えているのが葉隠なのである。
また、次のような一文もある。「上役には煙たがられるような存在であれ」。
それを受けて三島は、人に煙たがられることが避けられないのは『人に軽蔑されるくらいなら、死んだほうがましだ』という、信念ゆえである、とも明言している。そのような解釈は、彼の孤独感、厭世観から来ているようにも感じられた。
一冊の書物に自らの行動規範を置く危険性を、三島が身を持って示してくれたかのような作品であった。
50点
「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という言葉で有名な「葉隠」。その書に対する、三島なりの解釈を表した一冊。
周知の事実であるが、三島は割腹自殺を遂げた。そのことを思うに付け、彼が葉隠に心酔したわけが透けて見えるようである。常に死を意識し、それを身近なものとして捉えているのが葉隠なのである。
また、次のような一文もある。「上役には煙たがられるような存在であれ」。
それを受けて三島は、人に煙たがられることが避けられないのは『人に軽蔑されるくらいなら、死んだほうがましだ』という、信念ゆえである、とも明言している。そのような解釈は、彼の孤独感、厭世観から来ているようにも感じられた。
一冊の書物に自らの行動規範を置く危険性を、三島が身を持って示してくれたかのような作品であった。
50点
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