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よしなしごとども 書きつくるなり
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道尾秀介(文藝春秋社)

 大学生・秋内の目の前で、知り合いの少年がトラックにはねられる。少年が連れていた犬が、暴走して道路に飛び出したせいで。なぜ犬は暴走したのか?

 読了後、嫌な予感がしてこの作品に関する書評をいくつか読んだ。褒めているものが多かった。けれど正直に書こう、私にはつまらなかった。
 まず思ったのは、秋内が過剰にうぶだということ。微笑ましいを通り越してイライラした。
 ストーリーもいただけない。犬の暴走が少年の命を奪う、その設定がまず受け容れがたかった。しかもその暴走の原因を作った人物は、事実を隠蔽するために、ある男性を殺そうと企む。男性が、その事実に気付く かもしれないから、 という理由から。かもって。その軽さに唖然とした。
60点
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乙一(幻冬舎)

 小学五年生のマサオは、新しく担任になった男性教師に目の敵にされ、クラスのみんなからも蔑まれるようになる。
 日々悩むマサオは、あるとき顔が真っ青な男の子を見掛けるようになる。他の誰にも見えていないらしい「アオ」。マサオを見つめるアオの正体とは。

 人格の破綻している教師。エスカレートしてゆくクラスメート。物語がどこへ着地するのか、固唾をのんで読み進めた。
 常に緊張を強いられるマサオの恐怖が、切々と伝わってきた。
 文章はマサオの一人称で書かれているのだが、時として小学生らしからぬ単語が出てくる。その理由は、あとがきに明記されているので、そこまで読めば誰しも納得できるだろう。
75点
道尾秀介(東京創元社)

 母親を癌で亡くした凰介は、父親と二人暮らしとなる。その直後、幼なじみの亜紀の母親が自殺を遂げ、亜紀も交通事故に遭う。次々に起きる事件に、小学五年生の凰介は混乱するが……。

 読みやすくて分かりやすくてどんどん読めてしまったが、読了したとき引っ掛かる点がいくつかあった。
 凰介がときどき見る幻覚のようなものが描かれていたが、これは必要なエピソードだろうか。記憶とは曖昧なものだという意味で入れられた話であろうが、あまりにも思わせぶりというか、大げさ過ぎる気がした。
 終盤の屋上での事件にも疑問が残った。その夜、偶然にも「そこに居合わせた」? 偶然にもほどがあるだろう。
70点
折原一(講談社)

 山本は「月刊推理新人賞」に応募すべく『幻の女』を書き上げた。作品には絶対の自信があった。が、ミスと偶然が重なって、作品は盗作されてしまう。犯人は一体誰なのか?

 極端に評価が分かれるという叙述トリック。本書はそれを用いて書かれている。私はと言えば、この手法は好きではないかもしれない。ピンとこないというか、読み終わった瞬間の開放感がないのが愉しくなかった。一拍おいてから「あぁ、そういうこと」なんて思うのは、愉しくない。
 それから、手記のかたちをとっているので、わざとそうしているのかもしれないが、文章が素人くさい感じがした。スピード感があって読みやすいのだが、平凡な表現でさらっと書かれている部分が多く、深みがない。
60点
水上勉(新潮社)

 幼い頃から禅寺で精進料理を作っていた筆者が、旬の素材を活かした料理を紹介するエッセイ。
 ふきのとう、みょうが、うど、高野豆腐……こういう食材は、どう料理されようが私は好きではない。しかしながら作者の書き方は、材料を慈しむ心にあふれ、とてもおいしそうに感じられる。
 特に「松茸」の部分では、生つばが出た。よく焼いたのを手で裂いて、柚子、だいだいをふりかけて……簡素にして贅沢な食べ方である。
70点
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