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廃用身

久坂部羊(幻冬舎)

 麻痺して動かなくなり、回復の見込みも無い手足のことを廃用身という。漆原医師は、本人のみならず介護者にも負担増となるその廃用身を、切断することを思い付く。
 その画期的な方法は、行き詰まりを見せている老人介護に、希望の光を投げかけたかのように見えたが……。

 ノンフィクション? と思わせるような、凝った作りになっている。
 たぶん一部は真実なのだろう――介護者の1/3が、お年寄りに憎しみを抱いている、想像を絶する虐待が行われている等々――恐ろしいことだが。
 さて、果たしてこの療法は是か非か。筆者はどちらとも断言はしていない。
 が、漆原の持つ根源的な闇の部分をこういうふうに描いたということは、心情的に非なのかもしれない。
 だけれど近い将来、老人介護が立ち行かなくなったら、非とばかりも言ってられないのでは? そんな問いかけを発しているようでもある。
70点
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診察室にきた赤ずきん

大平健(新潮社)

 精神科を訪れた患者に、医者が昔話を語ってきかせる。引きこもりの息子の親には「三ねんねたろう」の話を。良き妻を演じて疲れきり、離婚を考え始めた女性には「つる女房」の話を……。

 物語療法? いったいどんな療法なのだろう? とかなり興味を惹かれて本書を読んだのだが、期待外れだった。
 たぶん筆者は多くの患者に昔話をして、それなりの成果をあげてきたのであろうが、本当にこんなに上手くいくものだろうかという疑問が残った。
 だいたい「どうしてその話とこの患者の話がシンクロするのか?」という部分もかなりあって、それはいわゆるこじつけでは? なんて意地悪く思ってしまった。
40点

隕石誘拐

鯨統一郎(光文社)

 童話作家を夢見て大手企業を辞めた研二。彼の妻稔美と息子の虹野がある日何者かに誘拐されてしまう。
 犯人の目的は、稔美の記憶の底にある、宮沢賢治の遺した「七色のダイヤモンド」の隠し場所である。

 組織犯罪あり、童話の解説あり、妖精の登場あり、レイプシーンあり、と内容は多彩である。
 しかし、散漫な印象はなく、加えてとても理解しやすい文章である。
 ラスト、カリスマ性に欠ける犯行首謀者に少し失望した。部下たちがなぜ彼を崇拝できたのか不思議である。
 それと揚げ足を取るようだが、生活苦ゆえ米に玄米や餅米を入れていたという記述はおかしい。一般的に普通米より餅米のほうが高価であるはずだ。
75点

幸福な質問

おーなり由子(新潮社)

 コンセプトは大人の絵本、か。何かの雑誌でお薦め! と書いてあったので、素直な私は即読んで見た。でも、繰り返し読む気になる本ではない。絵は嫌いではないが……内容がどうにもかゆい。
 いや、けなしているわけではないです。ただ私には合わなかったということで。
20点

チョコリエッタ

大島真寿美(角川書店)

 高校生の知世子。映画研究部の部員である彼女は、あるとき卒業した先輩の正岡くんと再会する。二人はひと夏の間、ビデオカメラを回す。映される知世子と映す先輩。知世子はでたらめなことをしゃべり続ける……。

 フェリーニの映画「道」の話が頻繁に出てくる。それがしっくりと作品に溶け合っていて、知世子(チョコリエッタ)と主演女優のジュリエッタ・マシーナの会話にも違和感を抱かなかった。
 それと、先輩の祖父の話が良かった。道を踏み外しそうになっている孫を、風格と凄みで救う祖父。素晴らしい。

 この作品、装丁がとても可愛い雰囲気なので、逆に損をしているかもしれない。「いい大人が読む作品じゃない?」と思われそうだ(現に私はそう思った)。
80点

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