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ウォッチメイカー

ジェフリー・ディーヴァー(文藝春秋社)

 自らを「ウォッチメイカー」と呼ぶ連続殺人犯が現れる。惨殺死体のそばには古い時計が置かれていた。四肢麻痺の天才科学捜査官ライムは、刑事アメリア・サックスらとともに犯人と熾烈な頭脳戦を展開する。時計を十個購入したというウォッチメイカー。その犯行を食い止めることができるのか?

 事件はこれでほぼ解決? となってからの二転三転ぶりがすさまじい。このドンデン返しの妙を体験したら、そんじょそこらのドンデン返しでは満足できなくなりそうだ。
 ストーリーの面白さもさることながら、登場人物たちの造形が巧い。ひねくれもののライム。強くて優しいサックス。もう一人、尋問のエキスパートであるダンスは沈着冷静、興味深い知識を次々に開陳してくれる。

 二段組506ページという長編だが、その長さを感じさせない素晴らしい一冊だった。
95点
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動く指

アガサ・クリスティ(早川書房)

 物語の語り手である兄と、その妹、この二人が本当に生き生きと描かれている作品。筋自体は目新しさのない、平凡な印象の作品だが、兄の恋物語、田舎町の鬱陶しい人間関係などが、読ませる。

 ひとつ気になったところは、妹がそばかすが出来たと嘆くシーン。「……そばかすって、何やら強情でしみったれみたいに見えて、いやね」。
 がーん。私もあるんです、そばかす。そういうイメージなんだ……ちょっと凹んだ。
75点

うまい犯罪、しゃれた殺人

ヘンリイ・スレッサー(早川書房)

 テレビ「ヒッチコック劇場」でドラマ化された短編の中から、ヒッチコック自身が選んだ17個の作品が収められている。

 面白かったのは「恐ろしい電話」。
 昔、電話は一本の回線を、何家族か共同で使っていた。受話器を上げれば、他人が話している内容を聞くこともできた。
 あるとき、妻の具合が悪くなり電話を掛けようとした男は、既にふさがっていた回線を空けてくれるように頼むのだが……。
 ラストの盛り上げかたが素晴らしい。映像も、さぞかし怖い作品だったことであろう。

 それから「親切なウエイトレス」。
 とあるホテルのレストラン。衰弱しきった老婆は、優しいウエイトレスに財産を譲る話をする。ウエイトレスは固辞するが、次第に老婆の死を願うようになり……。
 人間の醜さが存分に描かれている。ひねりの効いたオチもうまい。
80点

FBI心理分析官

ロバード・K・レスラー、トム・シャットマン(早川書房)

 FBIの元捜査官が書いた本。この本の出版や映画「羊たちの沈黙」で、「プロファイリング」という言葉が一般的になったのではないだろうか。

 連続殺人犯とのやりとりは、まさに小説より奇なり。罪の意識が無い、後悔しない、だから再犯を繰り返す。日本は終身刑がないから、こういうモンスターが社会に戻ってくる危険性がある。そう考えると背筋が寒くなる。
70点

園芸家12ヵ月

カレル・チャペック(中央公論新社)

 園芸家の生態を各月ごとにつまびらかにした一冊。
 うまくいくたびに助長され、しくじるたびに鞭打たれ、どんどん高まる園芸熱(分かる分かる)。その熱に浮かされた園芸家の悲哀が、面白おかしく描かれている。

 水遣りのときのホースとの格闘。跳ね上がる、巻き付く、こっちはびしょびしょだが、庭にはまだ乾いた地割れが。
 雑草との格闘。「りっぱな芝生が欲しいと思ったら、いっそのこと雑草の種をまくべきかもしれぬ」。
 また、ほんとうの園芸家を見分ける方法も載っている。その庭に招待されたとき、まず尻が見えるのだ。ちょっと植え替えをしてるから、ちょっと土を柔らかくしてやらなくちゃ、ああ雑草がある……といつまでも尻が見えてたら、彼は園芸家なのだという。

 万人にウケるかどうかは分からないが、私にはウケまくった一冊だった。
80点

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