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よしなしごとども 書きつくるなり
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志賀直哉(角川書店)

 父親との長年に渡る不和の末に、やっとこさ仲直りできた息子の話。
 '78年に読んだ本。格別印象に残らない作品だったのだが、読み返してみたら、案外よかった。
 でも、父親と和解する以前の話は、やれ腹の底から腹が立っただの、やれこんなこと言われて、不愉快だっただの、そんな文ばかり。しかも生後間もない赤ちゃんが急死したりして、なんとも陰鬱な内容。しかしその後の、子供の誕生、和解成立のシーンなどは、なかなかの出来栄えだと思う(何様じゃ)。
 出産に立ち会う場面では、はじめは「醜い妻を見たくない」なんてほざいていたが、いざ生まれてみれば「醜いものは一つもなかった。……すべては美しかった」。
 ったく、たわけ者め。
65点
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重松清(筑摩書房)

 昭和38年生まれの「お父さん」が娘に語ってきかせる等身大の昭和史。
 筆者も「お父さん」と同じ年齢。ということは、まさに重松氏の歴史を語ったのであろう。
 テレビはすでに居間にあり、新しいモノ、誰もが欲しくなるものを発信し続けていた時代。
 パパ・ママという呼称が一般的になり、子供からみた親は無条件に尊敬する対象ではなくなっていった時代。
 皆が中流意識を持つようになり、そこからはみ出た人々を思いやる余裕のなかった時代。
 筆者はそんなふうにこの時代を切り取った。

 私も同世代なので、けっこう興味深く読むことができた。が、結末がいけない、というかあまりにも当たり前の話になってしまっている。
 1960年代からこれまでを振り返って、ただ感傷に浸ってみたかっただけ? と思ってしまった。
55点
重松清(理論社)

 「10代の悩み相談室」に寄せられた質問、相談に答えたのが本書。
 10代のころ、そういえば自分もこんなことで悩んでいたかもしれない。親に日記を読まれたら? がんばって勉強したら、本当にしあわせになれる? などなど。

 特に昔を思い出したのは
 「仲の良い子と別なクラスになってさびしい。今のクラスでは、二人組みになるように先生から言われると、自分が余ってしまう」
 という相談。
 重松氏の答えは
 「自分も中学の頃、一人になることを恐れていたから、気持ちはよく分かる。でも『たまたま』一人になったのなら、その状態を受け容れて、一人でも大丈夫だという姿勢でいよう」。
 分かりやすくて良い答えだと思った。

 全体的に、重松氏の答えはなかなか説得力があるものが多かった。難を言えば少々話が長い。
60点
重松清(新潮社)

 視点は違えど、すべて「いじめ」がテーマの短編集。
 表題作の「ナイフ」。息子がいじめられていることに気付き、苦悩する父親。彼が回想するシーンで、新生児室にいる息子に「生きることに絶望するような悲しみに出会いませんように」と願う部分がある。皮肉なものである。

 この作品を読みながら、ずっと考えていた。自分の子供がいじめにあったら、ということを。でも想像することさえ厭だった。学校なんか行かなくていい! って言うと思う。なぜならこの作品に出てくるようないじめっ子はタチ悪すぎで、根底から病んでいるから。
 気に入らなかったのは「エビスくん」。悪ガキがほとけ心を起こすあたりが嘘くさかった。現実はこうはいかないだろう。
70点
重松清(幻冬舎)

 文体が村上春樹にそっくり。これが彼の作品だと言われても、全然疑わないと思う。主人公は十八回くらい(数えないでね、冗談だから)ため息をついてるし、登場人物は変なあだ名で呼ばれてるし、濡れ場はあくまであっさりと、だし。

 内容は、次の通り。妻に先立たれた翻訳家である主人公は、妻の妹と同居することになる。その義妹は冬眠するという奇病持ちで、しかも妊娠していた……。
 話自体はおもしろかったが、村上氏の作品との差異を見つけようとしてしまって、どうにも感情移入できなかった。解説によると、この作品だけ毛色が違うそうなので、この作者の他の作品を読まずに結論を出すのは早いのかもしれない。
60点
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