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ライ麦畑でつかまえて

J.D.サリンジャー(白水社)

 高校生の「僕」は成績不振で学校を退学処分となり、寮を出て家に帰ろうとする。でも帰るに帰れず……。

 主人公が高校生なだけに、簡単に気が滅入り、有頂天になり、優しくなり、卑劣になる。この情緒不安定な状態の描写が、彼の独白というかたちで延々と続くので、次第に飽きて、ただ字を追いかけるだけの読書になってしまった。
 まるで知らない人のアルバムを見せられているかのように、退屈で空虚だった。

 余談だが、この作品を最初に読んだとき、私はすでに二十代後半だった。
 もっと若い時期に読んでいたら少しは主人公に共感できたかもしれないな、とは思った。
60点
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ラヴ・ユー・フォーエバー

ロバート・マンチ(岩崎書店)

 母親というのは、いつまでも子供のことを想っている、という内容の絵本。

 わかっていたのだ、こういう本だということは。なのに本屋で立ち読みしていたら、つい涙腺がゆるんだ。
 人間、経験してみないと、何だってわからないものである。いくら想像してみても、それは所詮「想像」であって、決して体験ではない。この当たり前の事実を、自分が親になって初めて実感できた。
 この絵本の「母親の慈愛」も、今読むからこそ真に理解できると思う。ああ、子供ってかわいい。無条件降伏、である。
65点

ラスト・チャイルド

ジョン・ハート(早川書房)

 十三歳の少年ジョニー。彼の双子の妹アリッサが誘拐されてしまう。それから一年、ジョニーは妹を捜し求めて、危険な調査……前科者を見張る……を続けるのだった。

 妹は行方知れず、父親も失踪、母親は街の権力者によって薬漬けにされられ、とあまりに過酷な境遇にいるジョニー。彼が大人に対して頑なな態度をとるのも無理は無いだろう。
 それでも誘拐事件の担当刑事・ハントは何くれとなく彼の力になろうとする。狂気と暴力が横行する物語のなかにあって、ハントの優しさが際立つ。
 また、服役囚だったフリーマントルは、そのフランケンシュタインのような外見に似合わない純粋かつ素直な心で、ストーリーに潤いを与えてくれた。
 対して悪の権化はジョニーの母親を手込めにし、金に物を言わせてやりたい放題のホロウェイであろう。富裕層の人格障害者というのは、本当に始末が悪い。
90点

ラッキーマン

マイケル・J・フォックス(ソフトバンク パブリッシング)

 パーキンソン病を患った俳優、マイケル・J・フォックスの自伝。
 彼が自らの病気のことをカミングアウトしたことは知っていたが、そこにたどり着くまでの苦悩は、想像を絶するものがあった。アルコールに逃げたり、家族にあたったり、引きこもったり。
 トップスターだった彼の絶望感は、読んでいるほうも苦しくなるほどだ。
 だが混迷の時期を乗り越え、病魔と闘う意志を固めてからの彼は、スクリーンの印象そのままの、ユーモアがあってひたむきな彼であった。

 それから「Back To The Future」の役を射止めた時のエピソードなど、私のミーハーな心を満たしてくれる部分もあったりして、その意味でも楽しめた。
 ひとつだけ難を挙げるとすれば、二重否定などの翻訳モノに特有の文章が少し読みづらかった。

 これはいわゆる「タレント本」の枠を超えた、画期的な作品だと思う。
85点

リプリー

パトリシア・ハイスミス(角川書店)

 映画「太陽がいっぱい」の原作。私も観ました、昔。主演はアラン・ドロンでした。

 でも映画の中のアラン・ドロン、この本の主人公みたいな性格だったか……読んでいて苛々するほど女々しい男。「……と言いかけたがやめた」とか「彼はうらめしそうにボブをじっとみつめた」とか、絵に描いたような卑屈人間。
 ストーリーは簡単に言うと、主人公のリプリーが大金持ちのディッキーを殺して、彼になりすますという話。
 殺人が起きるまでは退屈だった。が、事件後はリプリーが持ち前の小心者根性を剥き出しにして、それが皮肉にも楽しめた。
70点

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