Back To The Past
よしなしごとども 書きつくるなり
どちらでもいい
アゴタ・クリストフ(早川書房)
短編集。
というよりも断片集といったほうがいいかもしれない。非常に短く、あまり意味の分からない夢想のような文章も混ざっている。
『郵便受け』という作品は面白かった。
孤児院で生まれ、今や人生の成功者となった「私」。いつか本当の父や母から手紙がくるのではないかと想像する。「あなたが立派になってうれしい。年老いた私を援助してはくれまいか」、そんな手紙。
ある朝「私」の郵便受けに、父親からの手紙が届く。そこに書かれていたことは……。
「私」が望んでいたような親は現れなかった。自分を捨てたことを後悔し、足元に跪くような親は。不幸な親を救う自分。彼の二段構えの暗い願望には、人間の業の深さをみたような気がした。
45点
短編集。
というよりも断片集といったほうがいいかもしれない。非常に短く、あまり意味の分からない夢想のような文章も混ざっている。
『郵便受け』という作品は面白かった。
孤児院で生まれ、今や人生の成功者となった「私」。いつか本当の父や母から手紙がくるのではないかと想像する。「あなたが立派になってうれしい。年老いた私を援助してはくれまいか」、そんな手紙。
ある朝「私」の郵便受けに、父親からの手紙が届く。そこに書かれていたことは……。
「私」が望んでいたような親は現れなかった。自分を捨てたことを後悔し、足元に跪くような親は。不幸な親を救う自分。彼の二段構えの暗い願望には、人間の業の深さをみたような気がした。
45点
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隣の家の少女
ジャック・ケッチャム(扶桑社)
12歳のデイヴィッドは、隣の家に引っ越してきた少女・メグに、淡い恋心を抱く。メグは、事故で両親を失い、妹とともに伯母のルースに引き取られたのだった。
あるときデイヴィッドは、ルースがメグを虐待しているのを目撃する。しかもそれは、日を追って激しくなっていった……。
「これはフィクション」と、呪文のように自分に言い聞かせながら読み進めた。それくらい残酷で容赦がなく、陰湿なストーリーであった。
(比喩的な意味ではない)吐き気をこらえながらなんとか読了したが、最後までルースの狂気は理解できなかった。その息子たちの行為もまた、しかり。
加えて傍観者の立場から抜け出せないデイビッドにも、繰り返し失望させられた。彼は、性的好奇心にがんじがらめにされ、それに打ち勝つことができなった。この年頃における少年の悲哀をシンボリックに表しているのであろうか。
20年以上もの間いろいろな本を読んできたが、この作品は最高に(最悪に?)気分がゆううつになる本であった。
0点
12歳のデイヴィッドは、隣の家に引っ越してきた少女・メグに、淡い恋心を抱く。メグは、事故で両親を失い、妹とともに伯母のルースに引き取られたのだった。
あるときデイヴィッドは、ルースがメグを虐待しているのを目撃する。しかもそれは、日を追って激しくなっていった……。
「これはフィクション」と、呪文のように自分に言い聞かせながら読み進めた。それくらい残酷で容赦がなく、陰湿なストーリーであった。
(比喩的な意味ではない)吐き気をこらえながらなんとか読了したが、最後までルースの狂気は理解できなかった。その息子たちの行為もまた、しかり。
加えて傍観者の立場から抜け出せないデイビッドにも、繰り返し失望させられた。彼は、性的好奇心にがんじがらめにされ、それに打ち勝つことができなった。この年頃における少年の悲哀をシンボリックに表しているのであろうか。
20年以上もの間いろいろな本を読んできたが、この作品は最高に(最悪に?)気分がゆううつになる本であった。
0点
夏への扉
ロバート・A・ハインライン(早川書房)
天才的技術者でありながら、友人に裏切られて会社のみならず最愛の女性をも奪われた男。
彼は冷凍睡眠装置に入り、三十年後に復活しようとするが……。
男の飼い猫、ピートの描き方がうまい。下手な脇役を登場させるくらいなら、やんちゃな猫一匹を描いたほうがよっぽど作品にとってプラスになるという好例であろう。
そして彼の思想……すべての女性を非生産的な家事から永久に脱出させたい……は素晴らしい。
きちんとこなして当たり前の家事、そんな不条理がいつかはなくなることを私も強く願う。
80点
天才的技術者でありながら、友人に裏切られて会社のみならず最愛の女性をも奪われた男。
彼は冷凍睡眠装置に入り、三十年後に復活しようとするが……。
男の飼い猫、ピートの描き方がうまい。下手な脇役を登場させるくらいなら、やんちゃな猫一匹を描いたほうがよっぽど作品にとってプラスになるという好例であろう。
そして彼の思想……すべての女性を非生産的な家事から永久に脱出させたい……は素晴らしい。
きちんとこなして当たり前の家事、そんな不条理がいつかはなくなることを私も強く願う。
80点
ねじれた文字、ねじれた路
トム・フランクリン(早川書房)
自動車整備士のラリーは、16歳のとき、ある少女の失踪事件の犯人と目され、それからずっと孤独な人生を歩んできた。
サイラスは14歳のとき母親とともに街に流れつき、今は治安官として生活している。白人と黒人という人種を超え、幼い頃2人は友情を育んだ。が、少女失踪事件を機に、2人は別々の「路」を生きることとなる。そんななか新たな失踪事件が起き、また2人の人生は交差し始める……。
気は小さいけれど優しいラリーの哀愁が、ストーリー全体を包み込んでいる。1人はいやだ、誰か助けてと彼は心の中で叫び続け、その想いが過酷な運命を招きよせてしまう。
彼がもう少し器用に生きることが出来たなら、サイラスがもう少しラリーに心配りが出来たなら、彼らの人生は違ったものになっただろう。「路」はねじれずに済んだかもしれないのに。そう考えるとラリーが余計哀れに思えた。
80点
自動車整備士のラリーは、16歳のとき、ある少女の失踪事件の犯人と目され、それからずっと孤独な人生を歩んできた。
サイラスは14歳のとき母親とともに街に流れつき、今は治安官として生活している。白人と黒人という人種を超え、幼い頃2人は友情を育んだ。が、少女失踪事件を機に、2人は別々の「路」を生きることとなる。そんななか新たな失踪事件が起き、また2人の人生は交差し始める……。
気は小さいけれど優しいラリーの哀愁が、ストーリー全体を包み込んでいる。1人はいやだ、誰か助けてと彼は心の中で叫び続け、その想いが過酷な運命を招きよせてしまう。
彼がもう少し器用に生きることが出来たなら、サイラスがもう少しラリーに心配りが出来たなら、彼らの人生は違ったものになっただろう。「路」はねじれずに済んだかもしれないのに。そう考えるとラリーが余計哀れに思えた。
80点
ライ麦畑でつかまえて
J.D.サリンジャー(白水社)
高校生の「僕」は成績不振で学校を退学処分となり、寮を出て家に帰ろうとする。でも帰るに帰れず……。
主人公が高校生なだけに、簡単に気が滅入り、有頂天になり、優しくなり、卑劣になる。この情緒不安定な状態の描写が、彼の独白というかたちで延々と続くので、次第に飽きて、ただ字を追いかけるだけの読書になってしまった。
まるで知らない人のアルバムを見せられているかのように、退屈で空虚だった。
余談だが、この作品を最初に読んだとき、私はすでに二十代後半だった。
もっと若い時期に読んでいたら少しは主人公に共感できたかもしれないな、とは思った。
60点
高校生の「僕」は成績不振で学校を退学処分となり、寮を出て家に帰ろうとする。でも帰るに帰れず……。
主人公が高校生なだけに、簡単に気が滅入り、有頂天になり、優しくなり、卑劣になる。この情緒不安定な状態の描写が、彼の独白というかたちで延々と続くので、次第に飽きて、ただ字を追いかけるだけの読書になってしまった。
まるで知らない人のアルバムを見せられているかのように、退屈で空虚だった。
余談だが、この作品を最初に読んだとき、私はすでに二十代後半だった。
もっと若い時期に読んでいたら少しは主人公に共感できたかもしれないな、とは思った。
60点
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