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よしなしごとども 書きつくるなり
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マイケル・J・フォックス(ソフトバンク パブリッシング)

 パーキンソン病を患った俳優、マイケル・J・フォックスの自伝。
 彼が自らの病気のことをカミングアウトしたことは知っていたが、そこにたどり着くまでの苦悩は、想像を絶するものがあった。アルコールに逃げたり、家族にあたったり、引きこもったり。
 トップスターだった彼の絶望感は、読んでいるほうも苦しくなるほどだ。
 だが混迷の時期を乗り越え、病魔と闘う意志を固めてからの彼は、スクリーンの印象そのままの、ユーモアがあってひたむきな彼であった。

 それから「Back To The Future」の役を射止めた時のエピソードなど、私のミーハーな心を満たしてくれる部分もあったりして、その意味でも楽しめた。
 ひとつだけ難を挙げるとすれば、二重否定などの翻訳モノに特有の文章が少し読みづらかった。

 これはいわゆる「タレント本」の枠を超えた、画期的な作品だと思う。
85点
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パトリシア・ハイスミス(角川書店)

 映画「太陽がいっぱい」の原作。私も観ました、昔。主演はアラン・ドロンでした。

 でも映画の中のアラン・ドロン、この本の主人公みたいな性格だったか……読んでいて苛々するほど女々しい男。「……と言いかけたがやめた」とか「彼はうらめしそうにボブをじっとみつめた」とか、絵に描いたような卑屈人間。
 ストーリーは簡単に言うと、主人公のリプリーが大金持ちのディッキーを殺して、彼になりすますという話。
 殺人が起きるまでは退屈だった。が、事件後はリプリーが持ち前の小心者根性を剥き出しにして、それが皮肉にも楽しめた。
70点
フィリップ・クローデル(みすず書房)

 戦争によってすべてを焼き尽くされ、故郷を追われたリンさん。難民となった彼は、孫娘である赤ちゃんと一緒にとある港町へと連れて来られた。
 その街で、彼はバルクという気の良い男と出会う。二人の間には次第に友情のようなものが芽生えるのだった。

 私の拙い言葉では、この本の素晴らしさを表現できない、と思わせるほど良い本だった。
 悲しみに打ちひしがれ強ばったリンさんの心が、バルクさんの優しさでほどけてゆく。言葉も通じない二人だが、温かくゆっくりと心を通わせあう。その過程が、読むほどに味わい深い。
 終盤の、突然の二人の別れ、そしてリンさんの受難がまた読ませる。お願いだから残酷なラストにしないでくれと、祈るような気持ちで一気に読んだ。そしてその祈りは……これ以上はネタバレなので自粛。

 リンさんの故郷では、死ぬ間際にいくべき泉があるという。その水を飲めば、辛い記憶、悲しい記憶は消され、楽しかった思い出だけが残るのだ。
 バルクさんが見たというそんな夢の話も、とても心に響いた。
95点
ベルンハルト・シュリンク(新潮社)

 ハンナは無実の罪を着せられて刑務所行きになる。彼女がひた隠しにした事実は、自分が文盲であるということだった。

 彼女の羞恥心や価値観には驚かされた。すべてを失ってまで隠したい事実が文盲、現代の日本では彼女の心中を想像することさえ難しい。
 そして三十過ぎの彼女を支える十五歳のミヒャエル。何年も彼女のもとに通い、自分が本を朗読したテープを届ける。私は彼の行動には過度の偏執を感じてしまった。めくるめくような性を教えてくれた彼女に夢中になる過程は分かるが、その気持ちがずっと持続するというところが理解できなかった。
 でもショッキングな設定の割には、静かで地に足がついた読みやすい小説ではある。
80点
シェイマス・スミス(早川書房)

 孤児のレッドは、修道院(いわゆる孤児院)で育ち、やがて犯罪に手を染める。組織を操り、頭脳戦を勝ち残ってゆく彼。最終目的はいったい何なのか。

 レッドは、まず行動ありきで、その理由はなかなか明かされない。読んでるほうは疑問を抱きつつ、読み進めるしかない。でも謎が深ければ深いほど、それが解決されたときの快感は……言わずもがなであろう。
 また、レッドと対立する連続殺人犯「ピカソ」の存在も、ストーリーに起伏を与えている。

 ところで最終ページにあった一文は、事実であろうか。だとすると、この作品はとても悲しくて苦しい作品だと言えるかもしれない。
75点
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