カズオ・イシグロ(早川書房)
キャシー・Hは、ヘールシャムという奇妙な施設で育った。全寮制の学校のようなその施設には、将来「提供者」となる生徒と、教師のような「保護官」が生活していた。
外部と隔絶された世界の中で、生徒たちは数々の疑問を抱きながらも平穏に暮らしていた。
今や「介護人」となったキャシーは、その頃のことをあれこれと思い出すのだった……。
ごく普通の学園生活を描いている部分が多い。ティーンエイジャーに特有の幼稚なケンカや悪ふざけ。嫉妬や恋。
だが、すべての謎を解明した後のキャシーの回顧という設定のせいか、常に絶望や悲しみに彩られた何かが足元から忍び寄ってくるようで、読んでいてもどこか落ち着かない。
もし将来、本当に提供者や介護人という制度が実現したら(してしまったら)、世界は混沌を極めた後に壊れそうな気がする。それくらいこの制度はタブーではないだろうか。
80点
キャシー・Hは、ヘールシャムという奇妙な施設で育った。全寮制の学校のようなその施設には、将来「提供者」となる生徒と、教師のような「保護官」が生活していた。
外部と隔絶された世界の中で、生徒たちは数々の疑問を抱きながらも平穏に暮らしていた。
今や「介護人」となったキャシーは、その頃のことをあれこれと思い出すのだった……。
ごく普通の学園生活を描いている部分が多い。ティーンエイジャーに特有の幼稚なケンカや悪ふざけ。嫉妬や恋。
だが、すべての謎を解明した後のキャシーの回顧という設定のせいか、常に絶望や悲しみに彩られた何かが足元から忍び寄ってくるようで、読んでいてもどこか落ち着かない。
もし将来、本当に提供者や介護人という制度が実現したら(してしまったら)、世界は混沌を極めた後に壊れそうな気がする。それくらいこの制度はタブーではないだろうか。
80点
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