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よしなしごとども 書きつくるなり
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フィリップ・クローデル(みすず書房)

 戦争によってすべてを焼き尽くされ、故郷を追われたリンさん。難民となった彼は、孫娘である赤ちゃんと一緒にとある港町へと連れて来られた。
 その街で、彼はバルクという気の良い男と出会う。二人の間には次第に友情のようなものが芽生えるのだった。

 私の拙い言葉では、この本の素晴らしさを表現できない、と思わせるほど良い本だった。
 悲しみに打ちひしがれ強ばったリンさんの心が、バルクさんの優しさでほどけてゆく。言葉も通じない二人だが、温かくゆっくりと心を通わせあう。その過程が、読むほどに味わい深い。
 終盤の、突然の二人の別れ、そしてリンさんの受難がまた読ませる。お願いだから残酷なラストにしないでくれと、祈るような気持ちで一気に読んだ。そしてその祈りは……これ以上はネタバレなので自粛。

 リンさんの故郷では、死ぬ間際にいくべき泉があるという。その水を飲めば、辛い記憶、悲しい記憶は消され、楽しかった思い出だけが残るのだ。
 バルクさんが見たというそんな夢の話も、とても心に響いた。
95点
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