オルダス・ハックスリー(講談社)
フォード紀元XX年、人々はすべて人工授精で産まれ、胎児のうちから階級分けされて条件反射を仕込まれる。たとえば暑い場所で働く予定の者は、暑さを本能的に好むように。
文学も宗教もなく、不快なことはことごとく排除された社会。それは果たして「すばらしい新世界」なのか?
いつか面白くなるのかと最後まで我慢して読んだが、徒労に終わった。
旧世界から偶然野蛮人がやってきたあたりは少し盛り上がったが、彼が何かにつけシェークスピアの「オセロ」などの一節をそらんじるので、読んでいて白けてしまった。なぜ彼は自分の言葉で表現しないのか、と。
ラストは、まぁこうなるだろうな、という意外性のないラストだった。もうひとひねり欲しかった。
40点
フォード紀元XX年、人々はすべて人工授精で産まれ、胎児のうちから階級分けされて条件反射を仕込まれる。たとえば暑い場所で働く予定の者は、暑さを本能的に好むように。
文学も宗教もなく、不快なことはことごとく排除された社会。それは果たして「すばらしい新世界」なのか?
いつか面白くなるのかと最後まで我慢して読んだが、徒労に終わった。
旧世界から偶然野蛮人がやってきたあたりは少し盛り上がったが、彼が何かにつけシェークスピアの「オセロ」などの一節をそらんじるので、読んでいて白けてしまった。なぜ彼は自分の言葉で表現しないのか、と。
ラストは、まぁこうなるだろうな、という意外性のないラストだった。もうひとひねり欲しかった。
40点
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イーユン・リー(新潮社)
アメリカに行きたいという友人のために、自分の恋人と偽装結婚させるという方法を思い付く三三(サンサン)。二人は無事にアメリカに行くが、偽装のはずだった結婚を続けるという。それから十年、三三のもとに二人が離婚したという知らせが届く。独身を通していた三三は戸惑うが……。
十個の短編の中で一番気に入ったのが、こんなあらすじの『市場の約束』である。
三三の独り身の悲哀がしんしんと伝わってきた。教職にあるものの、学校では浮いた存在であるらしい。煮玉子売りをしている母親は、無学で頑固。
そんな閉塞感を打ち破るような事件がラストで起きるが、彼女の未来が相変わらず明るくは無さそうなのが哀れだ。
この作品もそうなのだが、淡々とした語り口でありながら一種の「熱」を感じさせる作品が多かった。中国という国が人々の生活に暗い影を落としても、彼らはしぶとく生きていく……その根底に秘められた「熱」を見た気がした。
85点
アメリカに行きたいという友人のために、自分の恋人と偽装結婚させるという方法を思い付く三三(サンサン)。二人は無事にアメリカに行くが、偽装のはずだった結婚を続けるという。それから十年、三三のもとに二人が離婚したという知らせが届く。独身を通していた三三は戸惑うが……。
十個の短編の中で一番気に入ったのが、こんなあらすじの『市場の約束』である。
三三の独り身の悲哀がしんしんと伝わってきた。教職にあるものの、学校では浮いた存在であるらしい。煮玉子売りをしている母親は、無学で頑固。
そんな閉塞感を打ち破るような事件がラストで起きるが、彼女の未来が相変わらず明るくは無さそうなのが哀れだ。
この作品もそうなのだが、淡々とした語り口でありながら一種の「熱」を感じさせる作品が多かった。中国という国が人々の生活に暗い影を落としても、彼らはしぶとく生きていく……その根底に秘められた「熱」を見た気がした。
85点
フランシス・F・コッポラ(角川書店)
コッポラが自ら選んだ短編、その中でも選りすぐりを集めたこの本。洒落た装丁、解説者も絶賛。いやが上にも私の期待は高まっていた。
ところがどうでしょう、このていたらく。全然おもしろくない。まぁ読めるかなと思ったのは「落札します」くらい。それだって、特別おもしろい訳で無し。
読むのにすごく時間を食ってしまった。ここまで期待を裏切られるとぐうの音も出ない。
25点
コッポラが自ら選んだ短編、その中でも選りすぐりを集めたこの本。洒落た装丁、解説者も絶賛。いやが上にも私の期待は高まっていた。
ところがどうでしょう、このていたらく。全然おもしろくない。まぁ読めるかなと思ったのは「落札します」くらい。それだって、特別おもしろい訳で無し。
読むのにすごく時間を食ってしまった。ここまで期待を裏切られるとぐうの音も出ない。
25点
シェル・シルヴァスタイン(講談社)
かけらはひとりで坐っていた
そんなフレーズで始まる『大人のための童話』、だそうである。作者が大人に読んで欲しくて作った童話ならば、きっとすべては何かの暗喩なのだろう。
かけらのもとにやってくるものたち……風船のようなやつは、傷付きやすくて手に負えない弱い人間だろうか。仔細に見すぎるやつは、さしずめ寛容さが足りなくて、揚げ足取りな人間か。
そしてひとりじゃころがれない、と懐疑的なかけらに、ビッグ・オーは聞く。
「やってみたことはあるの?」
このひと言にこの本の主題が凝縮しているような気がした。
60点
かけらはひとりで坐っていた
そんなフレーズで始まる『大人のための童話』、だそうである。作者が大人に読んで欲しくて作った童話ならば、きっとすべては何かの暗喩なのだろう。
かけらのもとにやってくるものたち……風船のようなやつは、傷付きやすくて手に負えない弱い人間だろうか。仔細に見すぎるやつは、さしずめ寛容さが足りなくて、揚げ足取りな人間か。
そしてひとりじゃころがれない、と懐疑的なかけらに、ビッグ・オーは聞く。
「やってみたことはあるの?」
このひと言にこの本の主題が凝縮しているような気がした。
60点
アガサ・クリスティー(早川書房)
孤島に集められた、面識の無い十人の男女。彼らがマザーグースの歌になぞらえて、次々と殺されてゆく。
中学生の頃、初めて読んだのだが、まさに夢中になって読んだ。ミステリーの面白さ、ひいては本を読むことの楽しさを、圧倒的迫力で教えてくれた本である。
そして何度読み返しても新鮮で色褪せない。贖罪というテーマもまた、私好み。
100点
孤島に集められた、面識の無い十人の男女。彼らがマザーグースの歌になぞらえて、次々と殺されてゆく。
中学生の頃、初めて読んだのだが、まさに夢中になって読んだ。ミステリーの面白さ、ひいては本を読むことの楽しさを、圧倒的迫力で教えてくれた本である。
そして何度読み返しても新鮮で色褪せない。贖罪というテーマもまた、私好み。
100点